第17話 故郷

「時に人々はなぜ命を懸けて故郷を守るのかな」

「そうだね、人々は生まれ育った故郷に囚われ、そしていつかそれは大体「尊厳」に昇華する」

「つまり人々は己が「尊厳」を守るため戦うの」

「えっ、厨二病すぎるって?まあ僕、実際、まだ厨房だからね」

「ああ、でも一つ確かなのはね?」

「君のその「祖国」とやらは、そういう意味では、全く空虚な概念だね」

「生まれ育ったわけでもない、住んでいるわけでもない「場所」にアイデンティティなんて、芽生えようがないと思うけどねぇ」

「ああ、あくまでこれは偏った思想を持ったガキの私見だからね?別に気にしなくてもいいよ?」

「君のその「祖国」とやらが君のモチベーションになるならそれでいいんじゃない?知らんけど」









「そうそこで私は思いついたんだ、核弾頭で直接殴れば最強だとね」

「いや、わけわかんねぇよ」

「無敵の防御力!無敵の攻撃力!これがベ〇スタもびっくり、イージス核弾頭神拳だ!」

「意味わかんねぇ上、不謹慎すぎるだろ…」

「ふっ、所詮、西側の核の傘に守られている国家の国民の分際で、ふっ」

「うわうぜぇ!ナギ、なんかあの戦いの後かからにうざぜぇくなった!」

「それほどでも…」

「褒めてねぇえよアホ!」

はいどうも、新生ナギことナギちゃんですぜ。

場所は高校、現在放課後、あのワンパンガールとの激闘から1か月ほど時が経ち、もうすぐ夏休みだ。

直人も由美も無事退院して日常が戻っていている。まあ、由美は今日欠席だけどな。

あいつ最近休みがちだな、大丈夫だろうか…まあ由美なら大丈夫かね。

因みに…あの紅茶砲はダンジョン協会に引き渡して、その後は知らん。

正直、慰謝料とか請求してもいいのではと思っている。

あ、あの架空戦車男は放置してきたのでマジで何にも知らんね。

「そういえばナギ、【無名の苗床】はいまだ封鎖されているのか」

「ん?ああ、ちょっと放射能汚染がね…」

「おいおい、だめじゃねぇかイージス核弾頭神拳」

「市街地じゃ使えんね」

「いや放射能ばら撒く技なんざ、地球上どこでも禁止に決まっているだろうが」

「ですよねー」

悲報、というわけでイージス核弾頭神拳(というか核弾頭の使用)は基本的にダンジョン協会に禁止されてしまいましたとさ、たはは。

というか私が核兵器を使用できることは基本最高機密になったという。

そりゃそう。ただの生態型メタ〇ギア扱いされちゃうからね、私。

まあ、冷静になると、仮にも核により様々な惨禍が齎された国の民として、この能力は思うところがあったので、これでいいのだ。

…ところで。

「…というか直人、ずっと気になっていたんだが」

「ん?なんだ」

「いや、なんだじゃねぇよ、なんでお前は放課後の教室で不気味なリボルバーを磨いているんだよ」

うん、なんかこいつおもむろに古めかしい汚れたリボルバーを取り出したと思ったら、ハンカチで磨きだした、まじでなんなの?厨二病。

「ふっ」

「うわきも」

「まて、今のお前の外見でのキモいは破壊力がありすぎる、危うくこれで頭を撃ち抜きたくなったぜ」

「撃ち抜けば?」

「ひでぇ」

「というかそれ、実銃?銃刀法とか大丈夫?」

「おいおい、戦車砲撃ってミサイル放つ俺たちが気にすることか?それ?」

…それもそうか?いや能力と実際の物は別じゃね?

…まあいいやもう。

と、ちょうど夕方のチャイムが鳴る。

「…そろそろ帰るか」

「そうだな」

そのまま私たちは帰路に着く。

「そういえば、ナギ、お前、夏休み予定あるのか?」

「なんだ、藪から棒に…ああ、そうだ、なんか家族でじっちゃん家に」

「田舎?ああ、お前が幼少期を過ごしたんだっけ?」

「ああそうだな、お前に出会う前の、な」

そう、私は夏休みに里帰りするのだ…この外見で。

「…じっちゃん、含めた人たちの反応が怖えな」

そうじゃん、私、茶髪碧眼美少女になったんだったわ。

じっちゃん、憤死しないよな?だいじょうか?

「…ふーむ、俺も行くか?説明を手伝ってやろうか」

「なんだ、直人、彼氏顔か?」

「ちちちちちげぇよ、せ、説明大変、だろうって、というか冗談だ、冗談!」

…いやなんでこいつこんな動揺してんの?

ただの冗句だろ…

「あそうだ用事があったんだじぁあななぎ!」

と叫んで直人は反対方向に走って行っていしまった。

…まじでなんなんだ。

というかあっち高校だろ?忘れ物か?

…まあいいや

というわけで私は帰宅したのであった。

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