第20話 稚拙で狂った壮大な計画

「…そうですか」

表情を変えず、そう呟く花音。

「ところで…ナギ君?」

「質問をしているのは私だが?」

「…この私」

と言って踏み込んでくる。

「…警告はしたぞ?ファイア!」

私は容赦なく花音に6インチ榴弾をぶっなす。

榴弾は容赦なく花音に直撃し炸裂する。

煙が立ち込める。


「この私…花音「」がたかが駆逐クラスの砲でどうにかなると思いましたか?」


結果は無傷…おいおい。

こいつ…スキル持ちの探索者か?

しかも、低く見積もってSランク、ほんとに何者だ?

それに武蔵だと...まさかね。

そうして更に踏み込んでくる花音。

ちっ…トマホーク、レディ。

と、そこで

「やめよ、武蔵、お主の対18インチ防御でも巡行ミサイル相手は怪しいからの?」

「…そうですか明、あなたがそう言うのなら」

そう言って花音は歩みを止める。

明…じいちゃんの名前だ。

いつの間にか、真後ろの巨大な木に腰掛けているじいちゃん。

「…で、なんでじいちゃんがここに?」

「ふむ、もうわかっておるのではなかろうか?」

…ちっ。

「…あんた、グルか」

「…まあ、落ち着くのじゃナギ」

「そうだな、じゃあ質問に答えろ、じいちゃん」

「…なんじゃ?」

「前はこの時期にたくさん来ていた親戚たちは…どこ行った?」

「そうじゃのう」

「…」

「花音武蔵…すなわちユニークスキル「戦艦武蔵」の実体化には…贄が、必要じゃった」

「…まさか、あんた」

「ああ、問題ない…なんせ同意の上だったからの」

同意の…上?

「そうじゃ、我らが悲願、この衰退した祖国を再び偉大とするためにの」

「…なんだ?限界突破右翼見たなことを言いだして?やっぱ、ぼけていたか?」

「可能なのじゃよ…スキルの力を使えばの」

…はぁ。だる。

「…ああ、もういいよ、で、親戚を生贄にしといて何がしたいわけ?端的に言ってくんない?」

「…相変わらずせっかちじゃのう…簡単に言うとじゃ、我が国を、人、土地、思想、信仰、そのすべてを統合し超越存在【ヤマトタケル】とするのじゃよ」

「…統合」

「そうじゃの…つまり皆が一つの偉大な存在になるということじゃ」

…えぇ。

「…わぁ、今時、90年代に流行ったああいう概念をマジでやろうとしていんの、これ」

うーん、やっぱりぼけ老人がスキルを得て誇大妄想に駆られているだけでは?


―残念ながら、本当だよ、ナギ君―


「む」

ダンジョン協会からのさっきもあった電話、いやテレパシー?が入る。

―久しぶりだな?支部長の【鉄壁の斎藤】だ、…すまんが事態がひっ迫していていな、端的に言うぞ…元Sランク探索者海原明は今の誇大妄想を実現できる能力がある―

…えッ、マジ?

―君なら探知できるのではないか…集まった自衛隊の部隊が―

言われて索敵範囲を広げてみる、すると。

…10式、MCV、空にはアパッチロングボウ、F35、そのほか複数の…これは師団規模の自衛隊の部隊がこの集落を包囲している。

―ナニコレ―

―海原明の野望が実現されれば、この国は滅亡するということであるからな、自衛隊の即応可能な全戦力が集結しつつある―

―なら、なぜさっさとじいちゃんを制圧しない?―

―一歩、遅かったのだよ…その集落は正体不明のエネルギーシールドによって封鎖されている―

―…今さっきじいちゃんの計画を把握したわけではないだろ?…なんで事前に対応しなかった?―

―海原明は政界とのコネクションを複数持っていてな…つまり権力があった…よって政治的理由により、逮捕に踏み切れなかったのだよ―

じいちゃん…どうやらとんでもない人間だったようだ。目立つのが嫌いとか言っていたが、とんだ狸爺だった。

―だが計画が露呈した今、最早阻むものはない…しかしどうやら遅かったようだ―

なんとまぁ、壮大で、間抜けな話だ。

―…で、私は何をすれば―

―簡単だ…すべてを灰とするのだ―

…は?

―失敗したら国が亡ぶ…一億人強が犠牲となるのだ、最早なりふり構わず、だ―

―…この集落には関係のない人々もたくさんいるぞ―

―…その上でも、だ…超法規的措置によりSランク探索者…【灰燼の海原】、すべての能力の使用を許可する…奴の計画を完璧完全に潰すため…文字通りその集落を灰燼に帰すのだ―

勝手に物騒な二つ名をつけやがって。

つまりあれだろ、私に、ここを…核攻撃しろと?

―想定される被害は?― 

―…ふむ―

―言え、被害は―

―…エネルギーシールド内の…900人弱、だな―

―なるほど、却下、私がどうにか解決する―

―っ…やはり、君もまだ子供だな、失敗すれば1億人が犠牲となるのだぞ!?―

―今まで何もできなかった自称大人たちの言うことではないね―

そう言って私は接続を切る。

「…大体把握したよ、じいちゃん」

「…そうか」

「…で、だ、ならなぜ私を呼んだ?わざわざ脅威となる私を」

「本来はわしが超越存在の器となる予定だった…だがどうやらワシでは器として小さすぎたのじゃよ」

「…へぇ、それじゃあ代わりに私を…てっ、ことか」

「理解が早いのう…そうじゃよ、その強力無比なスキルを扱えるお主ならば器として十分だ」

なるほど、大人ってやつはどいつもこいつも…狂っていんのか?

「そう、だからナギ君、そんな米帝の泥棒猫どもを捨てて私を…ヤマトタケルのカギとなるユニークスキル【戦艦武蔵】を受け入れなさい」

そう言って鉄扇を取り出す花音。

「…で、断ったら?」

「なに、ナギや、お前を戦闘不能にし、無理やりスキルを移植するまでじゃよ」

じいちゃんは古びた軍刀を取り出す。

…はぁ。旧時代の亡霊どもが…ややこしい状況にしやがって。

「いいよ、じいちゃん、花音とやら…正面から叩きつぶしてあげる」

ここまできたらもう…戦艦がなぜ淘汰されたのか…その稚拙で狂った計画ともども粉砕して、骨の髄まで教えてあげようじゃあないか!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る