第14話 オールド・アイアンサイズ

「拡張スキル!【タンクキラー】!」

奴が「戦おう」と言った瞬間由美が叫ぶ。…拡張スキル、やはり持っていたか。

「由美!」

「ナギ!直人!あれはどう見てもとびっきりにやばい【敵】だよ!」

判断がいやに早いが…まあ、多分その通りだろう、そもそもすでに宣戦布告してきている。

「ほう?タンクキラーとな?効果は恐らく地上兵器スキルからの回避性能上昇だったかのう?それと撃破特効か?」

「VLS32セル、レディー」

「APFSDSこいや!」

全員が戦闘状態に移行し…由美がその機動力を生かして突出して攻撃する。

「だが…戦闘ヘリの少女よ…この期に及んで出し惜しみは…いかんな?」

そういいながら奴は空中に大きな砲弾を出現させる…恐らく巡洋艦の主砲クラス。

…それにあの形状…粘着榴弾?

「拡張スキル【対空戦車道】、そしてホレ、くらうがよい」

そう言って、由美に砲弾を投擲する少女。

由美は全力で回避機動を取る。

「そんなもの!当たらな…ッ!?」

由美が躱したはずの砲弾が吸い付くように由美に誘導される、おい!物理法則どこいった!!!


―ズガッ!


「う、あっ!」

「由美!?」

砲弾をもろに受け出現させていたローターの破片をまき散らしらながら吹き飛んでいく。

「なに、私は親切な淑女だからな、教えてやろう?この拡張スキルは空中目標に対して【必中】の効果を与えるのじゃよ…そしてホレ、もう一発じゃ!」

そう言ってこちらに砲弾を投擲してくる。

「…ナギ!俺が受ける!うおおお!」

直人が俺の前に出で砲弾を受け止めようとするが…

「…いや、待て!直人!受けるな、躱せっ!!」

「は…何を言って…がっはっ!」

砲弾の直撃を受けた直人は、白目を剥いて吹き飛ばされる。

「粘着榴弾が…なぜ、複合装甲を突破した…か」

…やはり、嫌な予感が的中した!恐らく何らかの拡張スキル!クソ!これは迂闊に攻撃できない…。

「拡張スキル【ワンショット・ワンキル】じゃよ…これにより私の砲撃は【必中必殺】となるのじゃ」

「必中…必殺…ふざけてやがる…」

…なんでもありじゃねか…。

「大丈夫、安心せい?殺しはせん?まあ、あれじゃ!イケイケな若者にお灸をすえに来ただけじゃしな…でもちょっと期待外れじゃな」

…期待…外れ。

俺は煽るのは好きだが、舐められるのは、大っ嫌いなんだ(性格最悪)。

「ほれ!じゃあまた会おう?」

そう言ってこちらに砲弾を投擲してくる少女。

「拡張スキル「ダメージコントロール」!!」

必中必殺、恐らく迎撃は不可能。手札に必中効果に対抗する拡張するスキルがない。

ならば、受け流す!


―ズガッン!


「ぐっ…!?」

体に強烈な衝撃が遅い、意識が飛びそうになるが…なんとかダメージをコントロールして攻撃の被害を軽減する。

「…っ!?ほうほうほう!【必殺】の効果の方に抵抗したじゃと!驚いたのう!それができたのは貴様が初めてじゃ!」

「…ちっ、まずい、か」

なんか、奴が言っているが、クソ、想像以上にダメージが大きい…片膝をついたまま立ち上がれない。

「…だが一撃受けるのが限界のようじゃな?なに大丈夫じゃ?少なくとも貴様は期待外れではなくなったぞ?この世界最古最強の探索者たる私が言うのだから間違いはない!」

最古最強、か

そう言いながら奴は空中に数十発の砲弾を出現させる。

…はっ、あれが全部、「必中必殺」か…冗談じゃねよ…。

俺は…ここで、負けるのかね。

…それは…嫌だ、俺は負けるのが大っ嫌いなんだ!


―うーん?「あれ」に私がスキルを授けた君が負けるのは嫌だな―


突如、俺の脳内にあのスキルを獲得した時の声が響く。

「…な、んだ?」

誰なんだ、お前は…


―今はそんなこと、どうでもいいでしょ?君はあの【最古最強】に勝ちたいんでしょ?―


…ああ、そうだな、そうだ!


―君はどうせ貰い物のスキルで強くなるのだけど、それでもいいの?―


はっ…!利用できるものはすべて利用する…それが俺の考える実力だ!


―いいね、いいね、とても[現代的]な考えだ!…じゃあもう一つユニークスキルをあげるよ―


もう一つの…ユニークスキル?


―あのインチキ女に勝つにはそれしかないよ?で?なにがいい?…どんなユニークスキルが欲しい?「アイオワ級戦艦」?「シーウルフ級攻撃型原潜」?それとも「ズムウォルト級ミサイル駆逐艦」?―


…俺が欲しい…今、欲しいスキル、俺を一段階上のステージに引き上げるユニークスキル…では、俺に足りないものはなんだ、火力?装甲?ステルス性?より高度な戦闘システム?

…違う、俺が欲しているのは最古の探索者を名乗る奴との…圧倒的な経験値の差そのもの…。

イージスシステムという高度な戦闘システムを造り上げた歴史そのもの!

ならばっ!

致命的な数多の攻撃が迫る…もうダメージコントロールでは受けきれないだろう。

俺は再び立ち上がり迫りくる砲弾に対して…仁王立ちをする。

「む、最後は格好よく、というわけか?」

「…違う!これが俺の答え!俺が求めたのは世界最強たる合衆国海軍のその、象徴!すなわち…」

そう、リアリスト学派すら現代においても一国で世界と戦争して勝利しうると評価される合衆国の海軍力の象徴。

古いだけじゃ、意味がない、新しいだけでは奴に勝てない。

ならば、両方得るまで!これこそが、超大国たる力の象徴!


―へぇ?…「USSコンスティテューション」、それを選ぶのかい?―


世界最古の現代も稼働する「現役艦」。

米英戦争時、 あらゆる砲弾をはじくが如くのオーク材の船腹は、こう渾名されるに至る。


「…ユニークスキル!【オールド・アイアンサイズ】!」



【ユニークスキル「オールド・アイアンサイズ」

合衆国の「国の船」【USSコンスティテューション】の異名を冠したスキル、

その象徴たる力は、あらゆる攻撃を弾き返す】




俺の目の前で奴の数多の「必殺」の粘着榴弾は、弾かれる。

「ユニークスキルじゃ、と?…なん、じゃ?【必殺】の粘着榴弾を…弾い、た…?」

「…お前が、【必殺】の概念を付与するというのなら!」

俺は

「あらゆる攻撃を【弾き返す】!…さあ、第二ラウンドだ、自称最古最強?」

じゃあ、今度は【アーレイバーク級】の…真の打撃力というのご照覧いただこうか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る