第12話 唐突に始まるダンジョン攻略配信とフレンドリーファイア(故意)

「わあー、広い」

「全くだな」

ダンジョン内、俺と由美は驚きの声を上げる。

いやだってマジで広くて草、予想以上だ、前に潜ったAランクダンジョンより全然広い、

これなら全力で…。

「…よし、開始っと」

「って、直人、おい、何やってんだよ」

「ふ、緊張しなくなった俺は強いぞ…そしてこれを見てもみろ!」

なんか、直人がさっきの緊張ぶりが嘘のようになって手に持った何かを示してくる。

「なんだこれ」

直人が見せたのは小さなカメラが付いたドローンのようなもの。

「ドローン?」

「ああ、そうだ…しかし、こいつはなんとオーパーツをもとに造られた代物だ!」

おお!それは!

「あれか?スーパーなカミカゼドローンなのか?」

「…ちげぇよ…時に、ナギ…ダンジョン配信、というものを知っているか?」

なんだ、藪から棒に。

「知っているも何も、最近の有名探索者は大体それから生まれているだろう?」

今やゲーム配信と並んで巨大な配信コンテンツだ。

「…ふふふ」

「…なんだよ気持ち悪い」

「いや、ひでぇ…それよりこれはすごいぞ!」

そうして直人はその小型ドローンを宙に放つ、ドローンは安定して滞空している。

「…だから、何がすごいんだよ」

「ふむ?取り敢えず発言に気を付けたほうがいいぞ」

「…はぁ?」

先からわけがわからんが。

「これは、[自動配信くん]というものだ」

「自動…配信くん?ダサい…待て、ちょっと嫌な予感がしてきたんだが?」

「そう!これはダンジョン攻略風景を自動で大手動画サイトで配信してくれるドローンだ!」

へぇー、それはすごく現代チックだなー…っ!?

「おい待てまさか」

「そう既に!配信を開始している!のである!…因みに事前に黄昏戦闘団公式チャンネルを作っていて宣伝済み!登録者は既に10万人以上、現在の配信の同時接続者はなんと…3万人!?くぅ~、事前準備したかいがあったぜ!ドッキリ大成功だ、よし、ナギ、今、コメ欄を空中に出現させる機能を使って」

「直人」

「おっ、なん」

「ファイア」

「ぐぎゃっ!」

問答無用で直人に127mm砲を至近弾でぶちかます、慈悲はない、多分死なないし。

…クソ、しばらくネット離れしていたから全く気が付かなかった!?

と、直人を吹き飛ばした後、俺の視界の端に何か空に浮かぶウィンドウが出現する。


【!?】

【ふぁ】

【うわっ!?】

【これは予想外w】

【えぇ…(困惑)】

【ナオカス、吹き飛ばされてて草】

【問答無用やw】

【あれ、大丈夫なんですか?死んでない?】

【ナオト、逆ドッキリされて草】

【さすが八王子の大英雄だ!】

【いぇーい!ナギちゃん、ユミちゃん、見てるー?】

【おお、ふつくしいご尊顔だ】

【ユミちゃん!こっち見て!】

【ナギさん、無表情で草】

【「訃報」ナオカス、死亡】

【朗報だろ】

【ダンジョン配信楽しみです】

【初見です!】

【ナオカス=ナオトさんですか?】

【あー、もう滅茶苦茶だよ】

【カオスで草】


目の前のウィンドウを流れる大量のコメントらしきもの。

「えっ、これガチ???」


【ナギちゃん、困惑してるじゃんw】

【ナオト、マジで何も伝えてなかったのか】

【草】

【おい、ドッキリ主がいきなり吹き飛んだぞ】

【ガチですよ】

【ナウ(20xx年15時32分)】

【ガチですよ~】

【ガチです】


…。

…。

「よしこのドローンを破壊」

「ナギ!落ち着いて、多分これ仮物だから!」

慌てた由美に羽交い絞めにされる。

「止めるな!由美、俺はこのドローンを破壊してから直人に止めを刺す!」

「ナギ―!!!ほんと一回落ち着いて~!!!」


【とどめ刺そうとしてて草】

【今際の際だぞ、ナオト】

【初配信が仲間割れってマジ?】

【俺っ子ナギちゃんかわいい】

【ユミちゃん…苦労人やなぁ】

【というか、ナオトさん生きてるんですよね?】

【草生える】







暫く後。

「いや、ほんとすまん、ごめんない」

目の前で土下座する直人。

「…はぁ、探索者イメージ向上のため、協会の偉い人から頼まれて…か」

…そんな理由らしい…全く。

「…なぜ事前に相談しなかった」

「いや、その方が面白いかなって」

そうだ、直人は慎重なようで、突拍子もないことをする男だった…失念していた…。

今も視界の端でコメント欄が高速で流れている…いや鬱陶しいな!

「…もういいや、手遅れだし…ただし直人!こういう不意打ちはこれっきりにしてもらうぞ!」

「…おう、すまなかったな…反省している」

「さて、じゃあ、由美の番な」

「よーし、私やっちゃうぞー☆」

「…は?」

直人が疑問の声を上げた瞬間。

由美はヘルファイアミサイルを直人にぶちかます。

「ぐぼ、あへっ!」

至近弾を食らい吹き飛んでいく直人。

「なに、リーダーたるものちゃんとメンバーの分の復讐の場も与えるものだ!」

由美だって普通に知らなかったらしいし、被害者だからな!


【今度こそ死んだのではナオカス】

【流石ですリーダー!】

【いや草】

【なにこれ漫才?】

【同接増えてて草】

【ナオカスは二度死ぬ…】




それにしても、さっきから気になっていたが…

「なぜ、ナオカスって直人は呼ばれているんだ?」


【えっ】

【あ、そうか、じゃああの動画も勝手に…】

【他の探索者をひたすら馬鹿にする動画を上げまくってたんだすよ】

【だからナオカス】

【でも正直あの動画たち好き】

【ナオカス、愛される馬鹿な奴だった…】

【故人扱いで笑う】


「えぇ…それ普通に探索者のイメージ下げてないか…」

…昔俺がやっていたことだから、あまり強く言えないが、明らか本末転倒じゃねぇか!

…まあしかし、俺はこれでも元ぷいったーのアルファアカウント、こういうのは慣れている。

滞空するドローンに向き直る。

「はい、というわけで…どうも、ナギです、偉い人からの頼みということで…権力に弱い俺はそれに逆らえないので…このまま配信します、どうぞ、宜しく…まあ、別にすぐブラウザバックしてもいいが」


【あの八王子の英雄が、権力に弱いって】

【世知辛いなぁ…】

【やる気なしで草】

【楽しみです!】

【投げ銭開放しないのー?】



「いやだって俺、調子に乗ると某国に暗殺されかねないしなぁ」

いやほんとね…いいの?こんな機密の塊が配信して?米帝様にキレられない???

マジで協会の偉い人、俺のこと頼んだよ(人任せ)


【ぎりぎりの発言で草】

【某国…一体なにIAが出張ってくるんだろうな?】

【アメ〇カ怖い…】

【いや草】



まぁ、ぶちゃけ某元赤い国の兵器だったらマジで毒殺されかねなかったからまだ、米国製でよかったよ…

…はあ、取り敢えず直人を叩き起こして、さっさとダンジョン攻略始めますか…。多くの人に見られながらというのは全く落ち着かないが…しかたない、か。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る