第3話 ナギ、シンプルにイキる
「さて…ナギさん、次はあなたの番です」
「…へ?」
マジで!?
三田さんは後ろ飛び退く、結果、俺とオーガは一対一で対峙することに。
いきなりの無茶ぶりだ!だから探索者は嫌なんだ!
クソ、とにかく、ユニークスキルを発動、えーとなになに。
―機関始動と、唱えてみ―
おお、誰だが知らないがナイス!
「機関始動」
そう言った瞬間。
―ドクン
「う、あ?」
突然頭に流れ込んでくる情報の波。
…しばらく耐えていると収まる。そして気が付く。
自分の使える武器が…わかる。
体が一気に軽くなる、これは…?
―そりゃ、今の君は十万馬力だからね―
はは、どこのなんとかアトムだよ。
「ナギさん!」
と、三田さんの焦ったような声。
前を見るとオーガがこちらにその剛腕を振り下ろそうとしていた。
だが…なんか。
轟音―しかしそれは俺がオーガの腕を指一本で受け止めた音。
「…はい?」
三田さんの困惑した声が聞こえるが無視だ。
俺は攻撃を受け止められこちらも困惑しているオーガの腹にむかって、雑なパンチを繰り出す。
「くらえ、十万馬力パーンチ!」
「ゴヴァ!」
オーガが俺のパンチを受けて吹き飛んでいく。
「…オーガを、あの巨体を吹き飛ばした!?」
ふ、まだまだいくぜ?
なんか知らんが最高に楽しくなってきた、イキっていると自覚できていても止められない!
俺は倒れているオーガに向けて腕を向ける。そして
「75口径25mm機関砲」
そう唱えると、俺の横の虚空から機関砲の砲身が出現し。
「ファイア」
機関砲が火を噴く。
―ドン、ドン、ドン、ドン、ドン
連続した轟音が鳴り響く。
25mm弾を連続で受けたオーガは木っ端みじんになった。
ふふふ、やはり現代兵器、現代兵器こそが最強だ!
「…これは、凄まじいですね」
振り返ると、そこには若干の恐怖の表情を張り付けた三田さん。
そうだよ、これが数十万年、人類がただ「破壊」するという目的のためだけに積み上げてきた技術!ぽっと出の異能など目ではない!
「「「ガアアアアアアア」」」「「ガぁ」」
と、またもオーガが出現、今度は5体ほど。
「ナギさん!さすがに五体は!」
「問題ありません!」
俺の前で密集してくるなんて
「127ミリ砲」
今度はそう唱えると、先ほどの機関砲の数倍太い砲身が現れる。
「喰らいやがれ、5インチ榴弾の威力を!」
―ズガァンッ!
爆炎とともに5インチ砲弾が飛び出しオーガの集団に直撃する。
第三世代MBTすら直撃すればおそらくハルブレイクする威力。
オーガ如きが耐えきれるはずもなく、5体のオーガは爆散する。
爆風が肌をなでる、ふう。
「よし、討伐完了ですね!」
「…これは…イカれている、としか形容できませんね…」
近づいてきた三田さんがそう言う。
「…もう充分です…帰還しましょう」
疲れた様子の三田さん。
…
…うん、段々俺も冷静になってきた。
あれ、この力…ヤバくね?どう考えても一人の人間が持っていい力じゃ無くね?
ハイになって調子に乗りまくったが…これ、やりすぎたのでは?
「…やりすぎだな」
はい、そうですね。
場所は支部長室に戻り、先ほどの映像を支部長に見せた結果がこれだ。
「…凄まじすぎる、な、これは、Aランクモンスターを一撃でまとめて、だって?」
そうして頭を抱えだす支部長。
「…あれだ、これは私の一存でどうにかすることはできんな、上に報告させてもらう」
うわー、さらに面倒くさいことになりそうだな…。
「ただいま」
とりあえず今日は家に帰してもらえた。
ドアノブを掴み、ひねる
―バキンっ
…あ…ま、まあ不可抗力ということで…
そのままドアを開けると玄関には。
我が妹、海原唯が立っていた。
「…」
「…」
暫く見つめ合う俺たち。
「わあ、お兄ちゃんが、ほんとにお姉ちゃんになってるよ」
誰がお姉ちゃんじゃい。
「唯、ただいま」
「ど、どうしよう私、アメリカンな美少女にただいまって言われている!」
「…おい」
「それにしても…ほんと可愛いね、やばい、やばいよ!お姉ちゃん!」
「だから誰がお姉ちゃんじゃ!というかやばいのはお前の表情だ!」
なんか唯が獲物を見つけた、獰猛な肉食獣のような表情をしているのだ。
「いきなり白人美少女の姉ができた件!これ、ラノベにできるよ!」
うん
「いいからもう家に入れて…」
なんかもうほんと疲れたよ…俺。
あれだな、ダンジョンでイキったのが悪いなきっと、これからは自重しよう…
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