第6話 救世主

 時に、このような絶体絶命ぜったいぜつめい危機的状況ききてきじょうきょうおちいったら、誰もが救世主ヒーローを求めるだろう。

余っ程死にたいやつ以外は……

俺は当然、死にたくないので無駄だと思ったが救世主を求めた。

しかし、世の中はそこまで甘く出来ちゃいない。

救世主は現れなかった。


「まぁ、能力者だよな。殺すか……」


怪異は俺達と同じ言語を喋っている。

頭が良いのだろうか。

人間はいきなりどん底に落ちると逆に冷静になるらしい。

俺は冷静に怪異の分析を行っていた。

今の所、勝てる見込みは無い。


「まずは近くで寝ているこいつから……」


怪異は高崎に手をかざした。

刹那、極太のレーザーが高崎を襲う。

高崎はもろにそれを喰らった。


「跡形もなくなるとは思わなかったな……力の調節が上手く出来てない。」


その瞬間、怪異の腕が弾き飛んだ。

そして、それは血とともにビチャリと地面に落下した。


「何?!俺の腕が……一体誰が?」


怪異は混乱している。

腕を弾き飛ばした張本人が姿を現す。


「ふふっあははっ!!この腕を弾き飛ばす感覚!最高だ!!」


それは、消し飛んだはずの高崎だった。

しかし、何か様子がおかしい。

高崎の顔を見るととても正気とは思えなかった。


「なっ……!お前は、俺が消し飛ばした筈だ!!まさか、ギリギリで避けたのか?お前は瀕死の重傷だろう?何故そんな余力がある!」


「俺の能力だ。『ピンチになる程強くなる』能力……今の俺はこの世界では間違い無く最強だ……」


高崎がそういった瞬間、もう1本の腕が弾き飛んだ。


「そうか……まぁ蹴散らしてやるよ。所詮お前は人間だ。こうやって腕が無くなれば治せないだろう?」


怪異は一瞬にして両腕を生やし、高崎に攻撃した。

高崎の左腕が弾き飛んだ。


「あぁ。だがそれで俺は強くなる。殺してやるよ。」


「それはこっちの台詞だ!」


そして、高崎と怪異の激しい戦いが始まった。


「今の内に逃げよう。」


凌がそう言った。


「駄目だ。俺達も参戦しないと!」


「足手まといになるだけだ……それより俺は目が見えなくなった少し、連れて行ってくれるか?」


「……あぁ。」


俺は弱い自分に苛立ちを覚えながらもそう答えた。

ドカーンと激しい音が背後から聞こえる。

俺達は取り敢えず学校の外に出た。

その音は外まで響いていた。

まだ、戦いは終わってないようだ。


「俺、やっぱり行ってくる。」


凌は何も言わなかった。

俺を引き止めもしなかった。

雨が降り出した。

雨音に響いていた音が掻き消されやがて聞こえなくなっていた。

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怪異が蔓延る世界 杜鵑花 @tokenka

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