第5話 不幸の連鎖
すると、学校が徐々に崩れて行き、新たな学校が生まれる。
この玉には建物を複製して能力を持つ者と怪異だけのフィールドを作る力がある。
このフィールド内では怪異は姿を消せない。
それはここが現実の建物と違う紛い物だからだ。
その時、近くでガラガラと何かが崩れる音がした。
どうやら姿を現したようだ。
「さて、戦いの始まりかな……」
俺達の前に、俺3人分の大きさのミミズの様な形をした怪異が出てきた。
それの周りには人の手がはえており、その手のひらに目が付いている。
稀に見る異形の怪異だ。
「……こいつはヤバい……そう直感で感じた。能力を持っている可能性がある。迂闊な攻撃は駄目だ。」
凌がそう言った。
「うん!分かったよ!」
「あぁ、了解した。」
刹那、怪異の手の爪が鋭くなり俺達に斬り掛かってきた。
その攻撃を受けた学校の壁は賽子のように四角くバラバラになった。
こんな物を食らったらひとたまりもないだろう。
「3人でこいつを囲むぞ!」
凌がそう叫んだ。
俺達はそれに応える。
怪異が全方向に斬り掛かる。
しかし、その斬撃は俺達に当たるギリギリの所で消える。
これが凌の能力だ。
『目に映る全ての攻撃を消す』能力……つまり、凌の視界に入っていれば俺達に攻撃が当たることはまずない。
俺はポケットから銃を取り出し怪異に向けて撃つ。
攻撃をした後なので怪異は上手く反応できない。
このまま行けば当たる。
予め、弾丸に能力を込めておいた。
確実に致命傷になる筈だ。
ん?俺は凌が何かを叫んでいる事に気づいた。
だが、銃声を間近で聞いてすぐだから何を叫んでいるのか分からない。
途端、世界がスローになる。
嫌な予感がする。
避けなければ、怪異から離れなくてば行けない……無意識にそう思った。
しかし、銃を撃った反動で動けない。
怪異に弾丸が着弾する。
その瞬間、目が見えなくなる位の光が辺りを包み、轟音が響いた。
再び、視界が戻ってきたのはものの数秒後の事だった。
学校は悲惨なことになっていた。
至る所に血が飛び散り、天井は崩れ落ちていた。
俺は目の前にあった瓦礫に致命傷を与える。瓦礫越しにあった光景に俺は絶句した。
そこには、倒れている人間が2人と、瓦礫に押し潰されて死んでいる怪異が居た。
俺は近くで倒れている高崎に声を掛ける。
「おい!!大丈夫か?!」
反応は返ってこなかったが、生きてはいた。
次に凌のもとに駆け寄る。
「大丈夫か?!」
「あぁ、なんとかな。それより高崎がヤバい……怪異はお前が攻撃した後、お前に向かって毒を飛ばしたんだ。それを庇って高崎が毒を喰らっちまった。俺の責任だ。」
凌はか細い声で応えた。
違う……違う違う違う!凌の所為じゃない!俺が勝手に攻撃したのがいけなかったんだ!全ては俺の所為だ……
「おい、今はそれどころじゃないぞ。高崎を抱えて帰るんだ。まだ助かる。」
「……そうだな。急がないと……」
刹那、複製された学校が崩壊した。
俺達は強制的に元の学校に戻される。
そこに、複製された学校を破壊した張本人の人型の怪異が居た。
「よう。お前、能力者か?」
そいつが声を発すると俺の体は硬直した。
それくらい格が違う。
終わった……勝てるわけがない。
不幸は連鎖する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます