第2話 怪異夜行
そいつは卵のような形をしていて異様に大きかった。
「気持ち悪い卵だな。叩き割ってやる!!」
凌は卵に思いっきり拳をぶつけた。
しかし、カーンと金属がぶつかり合うような音が鳴っただけで卵はびくともしなかった。
「痛ぇ……固すぎだろ!だが……動かないな……この怪異……お前なら叩き割れるんじゃないのか?」
「元より、そうするつもりだ。」
俺の能力を使えばいとも容易く叩き割ることができるだろう。
俺の能力は『致命傷を与える』力を持つ。
発動条件は攻撃するという意思を持ち相手に触れることだ。
ここだけ聞くと最強の能力なのだが本当は虫1匹も殺せない最弱の能力だ。
理由は単純で致命傷しか与えられないからだ。
どれだけ殴ってもそれは致命傷にしかならない。
とどめを刺せないのだ。
例えば1発のパンチで体力の90%が減るとすると、10%が残る。
更にパンチすると1%、0.1%、0.01%と無限に生き残るのだ。
でも、2人居るときは俺が敵に致命傷を与えてもう1人がとどめを刺すので最強の能力となる。
「喰らえ!!」
俺は高く飛び上がり、パンチを繰り出した。
パンチは卵にクリティカルヒットし、卵にヒビが入った。
「よし!案外呆気なかったな。」
「安心するのはまだ速いみたいだ!あれを見ろ!」
言われた方向を見ると、卵が割れて中から大量の小型の怪異が出てきた。
「質より量ってか?背中は任せた!」
「了解。」
俺は凌の背中に回る。
辺りは既に怪異に囲まれていた。
俺は凌に絶対的な信頼を置いている。
安心して背中を任せられる。
目の前の敵に集中できる。
戦いの火蓋を切ったのは怪異の方からだった。
1匹の怪異が間合いに入ってくる。
俺はそいつを蹴り飛ばした。
致命傷だ、暫くは動けないだろう。
「こいつ等、1匹1匹が弱いな。楽勝だ。まぁ、数が多いけど……」
「あぁそうだな。キリがないからあれを使う。」
俺は懐から銃を取り出した。
愛用しているオートマチックのリボルバーだ。
これなら確実にとどめを刺せる。
残りの弾丸は6発、十分だ。
俺は、近づいてくる怪異を殴り、遠くに居るやつには鉄の塊をぶつけた。
「あらかた片付いたか……」
地面は怪異の血で染まり、死体が転がっている。
その様子はまさに地獄そのものだった。
「致命傷を受けて倒れてるだけの奴も居るからとどめを刺していってくれ。俺にはできないからな。」
「分かった。踏み潰してくる。」
はぁ……疲れた。
ちゃんと残業代は出るのだろうか?
それだけが心配だ。
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