第31話 再発
屋内の空気も、冬の寒さを覚えてきていた。
それはそろそろ、静電気の季節がやって来る事を表していた。
俺は四季の中では冬が一番好きだ。
いや、冬というより、冬に降る雪が好きなのだ。
寒い中、イルミネーションで明るくなった外で上からヒラヒラ舞い落ちてくる白い雪……そんな情景が容易に想像できる。
それにしても、夜が寒くなったものだな……
何時になったら炬燵を出そうか……
そんなどうでも良い事を考えて俺は現実から目を背けている。
「今日は泊まろうかな……」
天羽のその発言が全ての始まりだった。
「いや、まだ間に合う、まだ外はそこまで寒くない。」
「いや?凄い寒いよ?」
「確かに人によっては寒く感じるかも知れないが……あ!ほらっ!カイロあげるから!これで大丈夫だろう?」
俺は冬の為に早めに買っておいたカイロの袋の中の1つを天羽に差し出した。
カイロ界の中では結構な温度になる温かいカイロだ。
便利さと値段は比例する……つまり、このカイロは結構高い。
「何?帰って欲しいって事?」
流石に気づかれるか……
これに気づかれたらもう手は無い。
すんなり諦めるしか無いだろう。
「いや、そんな訳じゃあないけど……」
「良かった!そんな訳だったら切り刻んでた!」
ケロッと、天羽はそんな事を言った。
最近は収まっていたヤンデレが再発しだしたのだろうか……だとしたらかなり面倒だが……
今の状況もそれなりに面倒だが……
「じゃあ泊まっていいよね?」
天羽はそう圧をかけてくる。
こんな時、車で送ってあげれたら良いんだが……生憎、俺には免許も車も無い。
従うという選択肢しか無かった。
「あ、あぁ良いよ?勿論。こんな寒い中、女の子を1人で帰らせるわけにはいかないからな。」
「そう!ありがとう。」
さっきまでの穏やかな雰囲気は冬の寒さで凍ってしまったのだろうか……
「お、俺はもう寝るよ、疲れてるしな。」
「じゃあ、私も寝る!」
「な、ないとは思うが一応、念の為聞いておく……一緒に寝る気じゃあ無いよな?」
「あれ?そうじゃないの?」
「当たり前だろ?!」
常識も一緒に氷漬けなのだろうか……
かき氷にして食っちまったか?
「あの、咲凪?だっけ?あの女とは一緒に寝たのに?」
俺はそれを聞いた瞬間、絶句した。
「な、なんでそれを知っているんだ?!俺は誰にも言って無いのに?!」
まさか……いや、以前から違和感があったんだ……だが些細な事だからそこまで気にしていなかった。
例えば、料理配信の時、緊急キットをすぐに持ってきた事とか……
「か、監視カメラか?俺の家には監視カメラが何台も設置されているという事か?」
監視カメラを設置するには、家に侵入する必要がある。
つまり、知らぬ間に家に侵入されていたのだ。
「私と寝て……良いよね?」
今度はもっと圧をかけて言ってきた。
何故、急にヤンデレが再発してしまったのだろうか……
そういえば、ヤンデレやメンヘラの根源は精神の異常によるものだと聞いたことがある。
この短期間で天羽に精神的ストレスを与えてしまったという事だろうか?
心当たりがありすぎる……
こうなったのは恐らく俺の責任だ。
受け流すしか無いだろう。
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