第29話 天羽②
「さっさと帰れだって?嫌だね。断る。元々、屋上は俺の場所だったんだ。教室じゃあ居心地が悪い。そっちが帰って欲しいなぁー!」
「分かったよ!帰れば良いんでしょう?!私が!!教室に!!」
私は怒って屋上から出た。
その間、騎亜はただ私を見つめていただけで何も言うことはなかった。
教室に帰れば待っているのは男子達の舐め回すような気持ち悪い視線……
不登校になろうかと考えたが、後々困るのは自分だ。
このぐらいの事で不登校になっていたらきりが無い……乗り越えるのが一番いいのだ。
屋上を降りる階段の途中、私は違和感を覚えていた。
『寂しそうだったから』と心配する人間がいきなり突っ放したりするものだろうか……と。
その瞬間、私の頭に閃光が走った。
騎亜は私を教室に帰すためにわざと突っ放したんじゃあないかという予測が立った。
私は再び屋上まで駆け戻った。
誰かの手の上で踊らされるのは嫌いだ。
特にあの男の手の上で踊らされるのは大嫌いだ。
勢い良く、ドアが軋みながら開く……この音を聞くのは何回目だろうか……
「騙されるかぁー!!」
そんな声が風と共に振動して響き渡る。
騎亜は、屋上にあるフェンスの段差で目にどこから取り出したのかわからないタオルを掛け、横になっていたがビクッと体を動かし、フェンスを揺らした。
「ビックリしたー!あれ……何だ、また来たのか?とっとと帰れよ、五月蝿くてしょうがない。」
「四季は何がしたいの?!」
私は騎亜の言葉を無視して屋上の風に流されないように力強くそう言った。
まともな返答が返ってくるかなんて分からない。
だが、そう聞かずにいられなかった。
「唯一の幼馴染みだからな……大切にしたいんだよ。」
「へっ?幼馴染み?今、幼馴染みって言った?」
「あぁ、そうだが……ま、まさか今の今まで忘れていたのか?!……幼馴染みだと思ってたのは俺だけだったのか?!……だとしたら俺の友達はこの学校には……」
騎亜は両手で数を数えようとした。
しかし、いっこうに指が立つ事は無かった。
「ふーん、いたんだ、私には幼馴染みが……」
何処かで、幼馴染みとは恋仲にはなれないと聞いたことがある。
だったら、騎亜とは友達と言える友達になれるのかも知れない……
優しいし、心配だってしてくれる。
真摯に私と向き合ってくれる。
それに、舐め回すような視線で見てくることもないし下心だって持ってない。
「ねぇ、騎亜って呼んで良い?」
こうやって、すぐに心を切り替えるのは悪い事だろうか……
いや、騎亜だって友達が欲しそうだしお互いウィンウィンな関係だし良いはずだ。
「えっ?あぁ、別に……良いが……まさか―――」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます