第28話 天羽
それは、私が高校生だった頃の話―――
私はその頃、クラスのマドンナだった。
その事は自慢に思っていたし、他の人とは格が違うって自覚もしていた。
けど、私には友達と言える友達が居なかった。
私に近づいてくる人は皆下心を持ってきている。
だから、私は近づいてくる人皆に塩対応をしていた。
一時、その塩対応の所為で『岩塩の女王』と呼ばれていた。
正直、ちょっと笑ってしまった。
私は、どうしても友達が欲しかった。
ただの友達じゃあ無くて心からの友達が……
でも塩対応の所為で同性からも話し掛けられなくなってきてもう諦めかけていた。
しかし、そんな私に、話掛けてくる人がいた。
どれだけ塩対応してもずっと……
普通の男子なら一回塩対応するとかなりの確率で話し掛けなくなるのだけど……
その人物の名前は『四季騎亜』。
何処にでも居る普通の男子生徒だ。
初めは下心を持ってるんじゃあないかと疑っていたが、後々、彼がそんな性格の人間じゃあないことを知った。
キンコンカンと学校のチャイムが鳴る。
4時限目を終える合図である。
私はいつも、屋上で1人でバレないようにお弁当を食べている。
噂で、私のファンクラブが存在するというものを聞いてからかなり警戒をしている。
ガチャと軋みながら屋上の扉が開く……
結構な年季が入っている扉だ。
建てつけが悪い所為でもある。
朝早くから起きて自分で自分のお弁当を作ってきた。
それを涼しい屋上で1人で気楽に食べるのは格別だ。
私は1人で黙食をしていた。
こんな時、友達が居たら……
なんて幻想を考えながら……
ガコンッ!
いきなり、そんな音が鳴った。
音源は屋上の扉だ。
まさか、ファンクラブにバレたのだろうか。
私はそんな嫌な予測を立てる。
こういう時の私の予測はよく当たる。
「あ、これ逆か。」
そう言って入ってきたのは騎亜だった。
どうやら引き戸と押し戸を間違えたらしい。
「……四季は何で私についてくるの?ファンクラブの一員なの?」
私がそう問うと騎亜は少し驚いた顔をした。
「驚いたな……口を聞いてくれるなんて……まぁ、良いや。で、俺が何故ついてくるかだっけ?それは『寂しそうだったから』だ。それ以上でもそれ以下でもない。」
それを聞くと私は面食らった。
騎亜は恐らくファンクラブの人間じゃあない。
そう思わせる答えだった。
まぁ、怪しいことには変わりないけど……
「『寂しそうだったから』?余計のお世話だよ!さっさと帰って!!」
私はそう怒鳴るように言った。
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