第27話 家

 気付けば俺は真っ暗な世界に居た。

瞬間的に俺はここが夢の中だと直感で理解した。

落ちている……

俺は頬で風を感じていた。

ただ虚空の中に沈むように落ちる夢……

夢占いとかはしたことがないがそれが表すのは決して良いものではないと分かる。

落ちて、落ちて、落ちて、まだまだ果ては訪れない。

取り敢えず、俺は仰向けになった体を翻し、この悪夢が覚めるのを待った。

もし、果てが来たら俺はグジャグジャに潰れてしまうのだろうか……

とそんな事を考えながら……


 俺はビクッとジャーキングと共に目を覚ました。

一瞬、果てに着いたのではないかと錯覚したが、さっきまでの虚空はいつもの見慣れた風景に変わっていた。

しかし、俺は毛布をかけて寝たっけな……

そんな怖い疑問が頭によぎる。

その時、何かを焼いている良い匂いが鼻腔をくすぐった。


「あ、起きた?」


キッチンから顔を出したのは天羽だった。


「不法侵入か……重罪だな……」


合鍵を何故持っているのか問い詰めたい所だが……こいつはそういう奴だ。

と割り切ることにした。


「いやいやいや、合法だよ!」


天羽は包丁を左右に振りながら言った。


「危ないって!!……ていうか料理、してくれてんだな。」


天羽は確か、料理を殆どしない筈だ。

つまり、勉強をして作ってくれているという事……心配して?


「そう!騎亜に食べて欲しくてさ!頑張って勉強したんだよ?あのコラボ配信の後……」


期間にして1ヶ月程度か……相当練習しているじゃあないか。

少なくとも俺なら1日で投げ出すだろう。


「そうか……ありがとう、俺のために。」


じゃあないよ!私にとっては騎亜はで収まる存在じゃあないよ!」


「そうか、配信者をやめて、俺の中の世界が縮まったが世界はまだまだ広いよな……」


自分の存在を小さく見てしまっていた……

俺は大人気配信者だと言うのに……

もっと自信を持った方が良いな。

天羽のお陰でそれに気づく事ができた。

感謝しないとな……不法侵入だけど……


「自信を取り戻せたお陰で恩人に対して図々しい物言いが出来るようになったんだが、1つ聞いてもいいか?別にそこまで深刻な事じゃあないし今に関係する事でもない。天羽は何故俺の事が好きになったのか……聞かせてくれないか?」


「えっ?」


勿論、天羽は素っ頓狂な声を出した。

だが、気になった事は何としても聞くというのが俺の性格だった筈だ。

いや、違うかも知れないが気になったら聞くのが人間だろう?


「……ま、まぁ良いよ?めっちゃ恥ずかしいけど……」





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