第25話 24時間生配信 終
一瞬、いや、一瞬と言うには長い間、辺りが静まり返った。
都会の喧騒さえ聞こえなかった。
例えるならばそう、時が止まったような、そんな感覚……
コメントさえも止まっている。
理由は単純明快で俺が突拍子も無く配信者を卒業すると言ったからだろう。
そして、時は動き出した。
一気にコメントの雪崩が起きた。
俺は配信をぶつ切りした。
これ以上配信に関わり続けたら視聴者との涙の別れになってしまうからだ。
俺は視聴者をこの世の何よりも大事にしている。
今回の事も視聴者を思っての事なのだ。
視聴者はどう思っているか分からないが俺なりの最善策だ。
これ以上の策は無い……筈だ。
兎にも角にも、もう後戻りは出来ない。
俺が選んだ道を突き進むしか無いのだ。
「何でですか?!何で配信者を卒業するんですか?!何か辛い事でもあったんですか?!」
「……2人共もう帰ってくれないか……」
今は1人になりたい、そんな気分だった。
何もやる気が起きない……
「……何があったか知らないけど取り敢えず帰るね。未来の彼女である私は空気を読めるからね。」
そう天羽が言った。
いつもの俺なら恐らく軽くツッコミを入れるだろうがそんな気力さえない。
「私も帰ります……あの人に先駆けされたら困りますしね。……何か困った事があったら相談してくださいね。」
そうして、2人は帰っていった。
俺は配信部屋にポツンと座っていた。
こんな時、吹っ切れれたらどれだけ楽なんだろう……ポジティブな思考が出来たらどれだけ楽なんだろう……
だが、俺にはそんな余裕は無かった。
色々な事がありすぎたのだ……この1年で……
俺は精神的にも身体的にもボロボロになっていた。
……もう寝よう。
寝たら全てを忘れられるとそんな到底不可能な事を願いながら……
朝、鳥のさえずりで目が覚める程俺は心地良い暮らしをしていない。
俺はスマホがけたたましく鳴り響く音で目を覚ました。
言うなれば、最悪の目覚めだ。
俺は重い体を何とか動かし、スマホを開けた。
メールの通知が複数、全て七海千愛からのメールだった。
その内容はおおよそ予想はついていたが昨日の事についてだった。
俺はそれを見て暫く思考し、やがてこう返信した。
「13時にあのカフェで会おう。少しだけ話す。」
あのカフェとは千愛と出会ったカフェの事である。
話さなくてはと思い俺はそう決断した。
今から4時間後、自宅の近隣のカフェなので移動には時間が掛からない。
俺はゆっくり準備を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます