第24話 24時間生配信⑨ しりとり

 そして、1時間後、俺達は案の定しりとりをしていた。

そこまでやることが無かった為だ。

後悔先に立たずという言葉があるが本当にそのとおりだ。

俺は最後まで配信の予定を組んでいなかった事を後悔した。

年を取ってくると、しりとりの語彙が増え、永遠に続けれるようになる。

相手が子供ならまだしも、残念な事に相手も大人だ。

それに同年齢、知っている語彙の量も同じくらいだ。

その為、しりとりは長く続いた。

勿論、視聴者を飽きさせないように所々で雑談を挟みながらだ。

しりとりをする配信何て他に類を見ないんじゃあないか?

俺はそう思った。


「ルールブック」


「クール」


俺はル攻めに遭っていた。

もう手持ちのルが少なくなってきたヤバいかも知れない。


「いやール攻めはキツイなーやっぱりしりとり最強戦法なだけあって……だが俺には切り札がある。」


「……どんと来い!私がルで返してあげる!」


「ルール!」


俺は切り札のル返しを使った。

一気に形勢逆転をする切り札だ。


「……ル返し?!ふふっ、甘かったね。」


「何?!どういう意味だ?!」


「ルーブル……ロシアの通貨単位……まさか私がル返しを想定していないとでも思っていたの?」


 しりとりは思いの外白熱した。

視聴者はどんな気持ちで見ていたんだろうか……恐らく、こいつ等は何をやっているんだという気持ちで見ていた筈だ。


「そろそろか……?」


「何が?」


俺には視聴者に向けて、知らせなくてはいけない大事な事があるのだ。

それを言う為にこの機会を設けたという所も多少はある。(やりたかったからというのが7割だが……)

今日は俺の誕生日だがそれが丁度良い。

誕生日は俺が配信を始めた日でもあるからだ。

確か、9周年だったかな……


「大事なお知らせだ。説明欄には書いていないが超重要なお知らせだ。」


「ちょっと待って?!そんなの聞いてないんだけど?!」


言っていないから当たり前だ。

これは俺しか知らない……

これを聞けば俺のファンは腰を抜かすだろう。


「今配信を見ている1万人の皆、心して聞いてくれ……」


『えっ……何々?』


『それは悪いお知らせですか?良いお知らせですか?』


「……ざ、残念ながら……悪いお知らせだ……」


思わず、泣きそうになってしまった。

俺が1番泣いてはいけないのだ。

しっかりしなくてはいけない。

隣に居る天羽、咲凪が心配そうな目でこちらを見ている。

俺は覚悟を決めた。


「……今回の配信をもって……俺、亜騎は……配信者を……卒業します……」



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