第23話 24時間生配信⑧ 食レポ

 食レポとは視聴者にその食べ物の味や香りを言葉だけで伝える高等テクニックである。

だが、俺は配信者だ。

どれだけ難しかろうが難なくやってやる。

何を言うかは既に思いついている。

後はこれを口に出すだけだ。


「トマトの酸味が程よく、生地も良い感じの柔らかさで美味しい。香りも香ばしいし、最高だよ。」


「そうだね。」


天羽の俺の食レポに同調した。

コメントは『ここで飯テロか……』とか『今すぐピザ買ってきます!』等が多く見られた。

どうやら俺は飯テロをしてしまったらしい。

言葉だけの飯テロって何なんだ。

俺はピザをカメラに映しているわけでもない。

そう考えるとこのコメントは俺の食レポだけで飯テロを受けていると錯覚したという意味が込められているのではないか。

かなり秀逸なコメントだ。


「あー美味しかった。」


そうこう考えている内に、いつの間にかピザが無くなっていた。


「皆はもう夕食食べたの?」


天羽はそんな質問を視聴者にした。

午後8時30分なので大体が夕食を食べ終わっていると思うが……


『今カップラーメンを食べてます!配信を見ながら食べるラーメンは格別です!』


『まだ食べてない。後で食べる。』


いや……意外にも半々ぐらいなのか。


「カップラーメンか……良いよね。手軽で美味しいって。」


「食べ過ぎは良くないけどね。例えば1日3食全部カップラーメンとか……」


「それは俺の事か?」


俺は1日3食カップラーメンでも飽きること無く食べることができる。

それぐらい好きなのだ。カップラーメンが。


「早死するよ?」


「別に、問題ない。もう手遅れだ。」


「問題なくないよ?!」


天羽がツッコミを入れた。

俺が言った事をボケとして捉えたようだ。


「まぁ、そんな事は置いておいて、残り3時間程度何をするか決めよう。」


「何って言っても、私達でしりとりをするわけにもいかないし雑談しか無いんじゃあないの?」


「やっぱりそうなるよなーでも、3時間ずっと喋っていられる自信はあるか?」


「うーん……無い!喋れて1時間かな。」


「じゃあ1時間は雑談するか!」


その後、俺達は雑談をした。

話題は配信についてだった。

どう思っているのかとかを少しだけ語った。

流石に全て語ってしまうと放送事故になりかねない。

なったとしてもなんとも思わないが……

それにしても、残りの2時間をどうしようか。

いっその事本当にしりとりでもしようかな。

俺はそう未来の事に頭を働かせていた。

喋りながらそんな事が出来るのは我ながら凄く器用だと思う。


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