第21話 24時間生配信⑥ 協力
ゲームは、何事も無く進行していった。
視聴者からはそう見えただろう。
しかし、配信の裏側はそうでは無かった。
咲凪が俺の事をツンツンとついてきたり(余っ程暇なのか)天羽が小声でもっと上手くやってとか言ってきたりした。
本当に、今までの中で最悪な配信かも知れない。
いや、以前にもっと最悪な配信があった筈だ……ってそんな事はどうでも良い。
大事なのは今だ。
ゲームは終盤に近づいていた。
それと比例して俺達も協力が出来るようになっていた。
現在時刻は夜の6時だ。
もう12時間程ぶっ通しでやっているが一向に疲れを感じる事は無かった。
それはこのゲームが楽しいからかもしれないし久しぶりに幼馴染みと一緒にゲームをしているからかも知れない。
多分、このゲームが神ゲーだからだ。
そう信じたい。
そうじゃないといけない。
「ちょっと待って?!死ぬ!死ぬ!」
考え事をしていたら、俺の操作しているキャラが落下死しそうになっていた。
油断大敵だ。
「後もうちょっと粘って!すぐに助けに行くから。」
「分かった!何とかする!」
『頑張って!』
『耐えて!!』
応援のコメントが多数流れた。
俺のチャンネルは治安が良いな。
俺は改めてそう思った。
「あっ、ありがとう!」
何とか落ちないように耐えていると、天羽が助けてくれた。
天羽は何故かこのゲームが上手い。
本人曰く初見らしいが……
天羽自身の才能なのだろう。
「次からは気を付けてね!」
「善処するよ……」
このやり取りを視聴者は何回見たのだろうか。
天羽に対して、俺はこのゲームが下手だ。
天羽が上手いから任せている部分もあるかも知れないが……
「さて、いよいよ最終ステージだな……ところで、この文字フォントは見たことがあるのだが気の所為かな。」
最終ステージの文字フォントは前にやった鬼畜ゲームのそれだった。
パクったのか、はたまたフリー素材のフォントなのか、些か疑問だ。
「伏線か……全てはこの時の為の……」
「たまたまでしょ。さぁ、やるよ!」
天羽はそんな冷たい事を言い、勝手にステージを始めた。
「ちょっ!まだ心の準備が!」
そう言うのも虚しく、ゲームは無情にも始まってしまった。
このゲームは鬼畜ゲームでは無い為、最終ステージは簡単だった。
程よい強さのボスを倒してクリア。
何度か死にかけたがその度に天羽が助けてくれた。
「あっ、終わった。」
「……意外と簡単だったね。」
視聴者的には面白くなかったかも知れない。
エンターテインメントとしてそれはどうかと思うがそうなってしまったものは仕方が無い。
俺達は、このゲームについて語りながらクレジットを見た。
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