第20話 24時間生配信⑤ 2枠目

 「さて、そろそろ新しい枠を作るとするかな……」


天羽の分のゲーミングチェアを用意した俺はそう言った。

2枠目開始まで残り3分程度だ。


「えーと、これをこうするんだっけ?」


普段、2枠目まで続く長時間配信をしないので不安だ。


「いや、あれをこうするんだよ。」


しかし、隣に居る天羽が教えてくれた。

天羽が居なかったら時間ギリギリだっただろうな。


「そっか。ありがとう。」


「やった!これで好感度アップだね!」


そういうのは口に出して言うものじゃあないと思うのだが……


「そんな事で騎亜さんの好感度が上がる訳無いじゃあないですか。」


「貴女には枠を作るなんて事出来ないでしょ?」


天羽が不気味という言葉が1番似合うであろう笑みを浮かべながら言った。


「わ、私にだって出来ますよ!それぐらい……」


恐らく、嘘である。

咲凪はあくまで配信をアシストするだけなのでそういった物には触れていない。

家で猛勉強していたら別だが。


「もう配信始めるからな……3、2、1!」


カチッと配信開始ボタンをクリックした。


「それでは、2枠目を始めようと思ったんですがその前に、今緊急でゲストが来ています。どうぞ!」


『えっ!誰だれ?』


『ゲスト?』


2枠目開始直後だというのにも関わらずコメントは大いに盛り上がった。


「どうもー天羽です!」


再び、コメントが盛り上がり、同接者数が一気に膨れ上がった。


「まぁ、1人では寂しかったので丁度良かった!」


「亜騎さんからメールが来た時はビックリしたよ。」


どうやら俺が天羽にメールを送ったという設定になっているらしい。

俺もそれに合わせる事にした。


『えっ、付き合ってるの?』


そんなコメントが来たので俺がそれを否定しようとすると天羽が「うん。そうだよ。」と言った。

それに俺はすかさず「冗談はやめてくださいよ。」と言った。

全く、誤解されたらどう責任を取ってくれると言うのだろうか。


「取り敢えず、次やるゲームはこれです。」


次に俺が選んだゲームは2人プレイの少し長めのゲームだ。

多分、これをクリアした時には24時間配信はだいぶ終盤になっているだろう。


「じゃあ、やるか!」


「そうですね!」


そうして、2枠目の配信が始まった。

配信中に天羽と咲凪が言い合わなかったら良いが……

俺はそう切実に願った。

前にも、こうして願った事があったが結局叶わずに終わった。

今回はそうならない事も願うしか無いだろう。

願いが叶う事を願う。

バカみたいな言葉だが俺にはそうする事しかできない。


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