第19話 24時間生配信④ 訪問者

 休憩と言っても、特にやる事はない。

いや……そう言えばあったわ。

やるべき事が……

俺は隣で静かに寝息を立てている咲凪に目をやった。


「おい!起きろー!」


「ふにゃ?」


咲凪はそんな良く分からない擬音を出して、目を覚ました。


「配信が始まってからすぐに寝たからビックリしたよ。そこまで疲れてたのか?まぁ、問題なかったんだが……」


「えっ?私寝てましたか?ずっと起きてた筈なんですが……」


「夢だろ……もう、1枠目終わったよ。」


その時、インターフォンが鳴った。

家のインターフォンは毎日鳴るのかも知れない。

最近、そう思うようになった。


「私が出ます。」


そう言って、咲凪が立ち上がる。


「いや、俺が行くよ。寝起きでしんどいだろ?」


「ありがとうございます。」


以前、スタッフに体調を崩されたらたまらないと言った事の有言実行だ。

だいぶ期間があいたが……


「はーい。今出ます。」


俺は宅配便を受け取る感じでドアを開ける。

ドアの奥に居たのは意外な人物だった。

何で今なんだ……と心の底から思った。


「面白そうな事してるから来ました。配信者の天羽でーす。」


パタンと俺は静かにドアを閉め、鍵をかけた。

しかし、すぐに鍵は開けられた。


「な、何で!?」


「ふふっ、私が合鍵を持ってないとでも思った?」


天羽は鍵を振り回しながら見せてきた。


「何で持ってるんだよ!」


「そんな事は良いじゃん!それよりもさ、24時間生配信してるんでしょ?私も入れてよ!」


「無理だ。視聴者が困惑する。」


俺は、天羽と咲凪が鉢合わせたら面倒だと思いそんな事を言った。


「でも、視聴者はこういう放送事故的な事を望んでるんでしょ?」


それを言われるとぐうの音も出ない。

俺達が玄関でそうこうしていると咲凪が玄関までやって来た。

最悪だ。


「何をやってるんです?……って、あの時の人じゃあないですか!」


「……これはどういう事?昨日は2人で一夜を明かしたって事?」


天羽がそう、無表情で問いかけてきた。


「その言い方には語弊があるぞ!俺は咲凪をアシスタントスタッフにしただけだ。」


咲凪と一緒に寝た事があるがその事は言わなかった。

身の安全を守るのが第1だからだ。


「……まぁ良いや。私も入れてくれるよね。」


「……はぁー、しょうがないな。」


俺は天羽を仲間に入れる事にした。

長々と迷っている時間は無いし、断ったら何かされそうだからだ。

正しい判断だと思う。


「やったー!」


天羽はそう、喜びの声を上げた。


「良いんですか?」


「時間も無いしこれしか無かったんだよ!」


「さぁ、そろそろ2枠目が始まるぞ。準備をしろ。」


俺は天羽を家に入れて、そう言った。

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