第17話 24時間生配信②

 

 「まじでこのゲーム難しすぎー、もう始めてから2時間も経ってる。」


俺はそう言葉を漏らした。

予想以上にこのゲームが難し過ぎた。

俺はゲームは上手い方だと自負してるだが……

これではそんな自信も消え失せそうだ。

そんな事を思っていると、ふととあるコメントが目に入った。


『10分でクリアするとは?』


「そんな事言ったっけなー分からないな。……ちょっと雑談挟もうかな。時間も良い感じだし。」


俺はここらで一旦雑談を挟むことにした。

気分転換には丁度良いだろう。

ずっと同じ画面が続いて視聴者に飽きられても困るからな。

気付くと、同接者数は10000人を超えていた。

深夜の配信だと言うのに大丈夫なのだろうか。

まぁ、睡眠導入剤にでもなってくれたら嬉しいな。


「雑談と言えば、皆に質問があるんだけどもし、異性3人から告白紛いな事をされたらどうする?」


俺は隣りに居る咲凪に目をやった。

しかし、隣には意識がある者は居なかった。

絶対に後で叩き起こしてやると俺は心に決めた。


『何その状況www』


『ワイなら全員と付き合う』


コメントを見ると、このようなものしか無かった。

別に、真面目に答えてもらわなくても良いから問題ないのだが……


「ふーん。まぁ、こんなもんか……って言うかこれしか雑談のネタを思いついて無いんだけど。頼む!誰かネタをくれー」


こうやって、視聴者に頼るのも配信の醍醐味だ。

配信をリアルタイムで見る人はこれが目的だと言っても過言じゃあない。


 ……、雑談は小一時間続いた。

正直、自分がここまで話を伸ばせるとは知らなかった。

30分ぐらいで終わる予定だった雑談も、気付けば1時間が経とうとしていた。

時の流れというものはいやに速いものである。

俺はそう体感した。

これは年と共に徐々に加速していくものだが俺はもうそんな年になってしまったのだろうか。

引退は近い。


「えー……1時間も話してたね。それじゃあ、ゲームに戻ろうか。うわー何処に初見殺しがあるのか忘れちゃった!」


ふと、咲凪の方を見ると、咲凪の眠りはより深くなっていた。

俺は結構な声で喋っているのだがよく寝られるな。

それから、時間が流れた。

数えていないがこのゲームで死んだ回数は余裕で500を超えると思う。

だが、それも、終わりに近づいてきていた。

最終ステージ……モニターにはその文字がデカデカと書かれていた。


「皆さん!遂に来ました!この時が……長かった……難しかった……でも、終止符を打つときが来ました……最終ステージ、いざ!」


 それからというもの、このゲームで死んだ回数が異様な程に増加した。

増加する数と時間の経過は比例していて、何時しか朝になっていた。

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