第16話 24時間生配信

 24時間生配信……それは、過酷な配信の事で配信者は1度は夢見るものである。

しかし、生半可な気持ちではその配信は行えない。

それをやるには、視聴者を飽きさせない話術、や何をやるか決めるセンスも問われる。

俺は今日、その配信をやるつもりだ。

時刻は11時56分……配信開始4分前だ。

俺の配信者人生史上初の試みだ。

以前からやってみたかったものの、覚悟を決めれなかったし、こういう配信は特別な日にやるものだと思っている為、中々出来ずにいた。

だが、今日は条件が全て揃っている。

今日(正確には明日)は、俺の誕生日だ。

それと同時にハロウィンの前日でもある。

特別な配信をやるのには十分だ。

……後2分だ。

俺は最終確認を始めた。

昼にありったけ買って来た(買う時に店員が驚くぐらい)エナジードリンクの準備万端だ。

マイクの位置も完璧!

後は……スタッフの咲凪が…………居ない!?

俺は咲凪をアシスタントスタッフとして呼んだ筈だが!?

配信時間を引き伸ばすか?

そう思ったが、それは視聴者を裏切る事になる。

間に合ってくれ……頼む!

配信まで後1分を切った。

その瞬間、玄関のインターフォンがけたたましく鳴り響いた。

何度も何度も、五月蝿いぐらいに。

だが、この時の俺は焦り故かそんな事は全く気にしてなかった。

玄関を開けると咲凪が、勢い良く飛び込んできた。


「お邪魔します!少し遅れました!」


俺は急いで配信部屋まで戻った。

ギリギリ、配信には間に合った。


 「どうも〜亜騎です。今日は24時間配信やります。イェーイ!パチパチ。」


まだ配信が始まった直後にも関わらず、同接者数は1000を超えていた。

コメントが嵐のように流れていく。

良い盛り上がりだ。


「で……今日はですね。先ずは、この最近流行りの超高難易度のこのゲームをやります。その後は、まぁ色々やりまーす。じゃあ早速始めて行くか……」


超高難易度ゲームは長時間配信には売って付けのゲームだ。

クリアするまでにかなりの時間を有するからだ。

中々クリア出来なかったら所々に雑談を加えたりも出来る為かなり万能だ。


「えーと、皆、ちょっと待って?えっ?死んだ?今……タイトル画面だったよね?えーまじか……そういう初見殺しもあるんだ。だとしたらかなりヤバいなこのゲーム……でも、皆さん安心して下さい。この俺が10分でクリアするので。」


そう、フラグを立てる。

それも配信者の仕事だ。

因みにアシスタントスタッフの仕事は配信中の事故や機械トラブルの対処等だ。

俺の配信ではそんな事は起きたこと無いが万が一の事に備えて今日呼んだのだ。


「あー!また死んだー!」


この配信はまだまだ続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る