第12話 デート

 『えっ?!逆に堕とせば結婚できるって事?!』


咲凪と天羽が同時に言った。

俺は困惑した。

まさかそこに食い付いてくるなんて思いもしてなかったからだ。

しかも、何で咲凪も食いついてるんだ?


「別に良いよ。まぁもう1度言うが、俺を堕とすのは無理だと思うがな。」


俺は1番安全な策を選んだ。

これで結婚できないとか言ったら包丁で切り刻まれる(刺身にされる)かも知れないからな。


「言いましたね!言質取りましたよ!」


咲凪が俺に近づいてきて言った。


「おいおい、何で咲凪まで……」


「ちょっと、待って!!何で貴女はそんなに騎亜に近づくの?」


「貴女は不法侵入して騎亜さんに包丁を向けて、何がしたいんですか?!」


「私は騎亜の幼馴染みだからいいもん!」


「幼馴染みだからって……」


それから、咲凪と天羽の言い争いが始まった。

正直、咲凪があそこまで怖いとは思いもしなかった。

絶対に堕とされないようにしないとな……


「それよりもだ……お前等さっさと帰れよ?!」


こうして、俺の初のコラボが終わるのだった。

もう2度とやりたくないと思った。


 そんな悲惨だったコラボが終わって、1日休みを挟んだ翌日、俺はとあるカフェまで来ていた。

それは何故かと言うと、以前に決めた視聴者と会う企画を行う為である。

最近、忙し過ぎではないだろうか。

まぁ、1日休みを挟んだ為体力的には問題ないのだが……


「はぁ……」


俺は深い溜め息をついた。

普通、企画提案から3日で企画実行をするのだろうか……

いや、恐らくしないのだろうが……

頑張るしか無いか……

っていうか、待ち合わせ場所ここで合ってるよな。

全然来る気配が無いのだが……

今回(次回があるかは不明)、ここに来る視聴者の人は俺の配信を昔から見ている人だ。

所謂、古参と言うやつだろう。

顔出しはマスクを外してと頼まれたらで良いだろう。

ガッカリされないと良いが……

そうこう考えていると、カフェ店内(何故カフェかと言うと、咲凪曰くカフェで待ち合わせした方がデート感が出るらしい。やってることはレンタル彼氏だ。)に一際浮いている人物が入って来た。

俺は直感であの人だと分かった。

俺は身だしなみを少し整え、準備をした。

暫くすると、案の定向かいの席にその人が座った。


「君がななせん(アカウント名)さんか?」


「は、はい。私がそうです。えーと、本名は七海千愛ななみちあです。千愛って読んで下さい。」


「俺は知ってると思うが亜騎だ。本名は伏せさせてもらうよ。今日はよろしくな。」


「は、はい!こちらこそ。」


「後、別に敬語は外して構わないよ。」


「分かりまし……分かった。」


「うん。じゃあ先ずはこのカフェで何か食べようか。丁度お昼時だしね。」


こうして、視聴者とデートが始まった。

案外、自分が初対面の人と喋れている事に驚いた。

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