第11話 救出?

 午後5時頃、神崎咲凪は仕事を終え、自宅に帰っていた。

今日は、仕事がたくさんあった。

それでも、定時に帰るのが私だ。


「疲れた……」


部屋でポツリとそんな言葉を零す。

別に、仕事が嫌いな訳じゃあないけど疲れる物は疲れるのだ。

嫌いという訳じゃあないけど……

今すぐ、お風呂に入ってベットに横になりたい。

頭ではそう思っている、でも体が動かない。


「あっ……そう言えば、騎亜さんはコラボだったんだっけ?会いに行こうかな。」


疲れているが、騎亜さんに会いに行く分に関しては全くと言っていい程問題がない。

何故なら、私が、騎亜さんの事を恋愛的に好いているからである。

何度かアピールはしているものの、騎亜さんは鈍感で中々気づいてくれない。

まぁ、私のアピールが控えめな事もあると思う。


「お風呂だけは入っておこうかな。」


騎亜さんに会うと決めると、疲れが殆ど吹き飛んだ。

私は浴室まで向かった。


 お風呂から出た私は、着替えをして、外に出た。

外は暗くなってきており、もう夜風と言っても差し支えない位の風が吹いていた。

お風呂上がりの散歩も中々に良いものだなと私は思った。

長いか短いか分からない中途半端な長さの髪が風でなびく。

ここから騎亜さんの家までは然程離れていないが歩いて行くには少し遠い。

でも、今日は歩いて行くことにした。

心地良い夜風が私をそうさせた。


 そして、私は歩き続け、遂に騎亜さんの家の前に着いた。

良い運動になったと思う。

ところで、何故騎亜さんの家の電気がついていないのだろうか……

私はそのような違和感を覚えていた。

この時間なら普通なら家に居る筈だ。

まさか、コラボ相手と呑みに行ったとか?

いや、失礼だけど騎亜さんは初対面の人とそんな事は出来ないだろう。

だとしたら、何かあったのだろうか……

その考えが頭に思い浮かんだ瞬間、私はドアに手をかけていた。

幸いにも鍵は開いていて、合鍵を使う時間を節約する事が出来た。

私は静かに家に入った。

家の中は、シーンと静まり返っていた。

それはもう、誰もが奇妙だと感じてしまう程に……

その時、ガタンと寝室で物音がした。

私はその音を聞いた途端、足早に寝室に向かった。

そして、ガチャリと寝室の扉を開ける……

寝室には、恐らく意識を失っているであろう騎亜さんとコラボ相手と思われる人物が居た。

よく見ると騎亜さんの手足は何かで縛られているようだ。


「貴女は……ふふっ、丁度良い。騎亜に近づく奴は、許さない。」


「呼び捨てですか?!貴女は騎亜さんとどういう関係なんですか?!」


「今気になる所そこなの?!まぁ良いや。私と騎亜は、夫婦よ!」


その途端、騎亜が意識を取り戻した。


「おいおい、誰が結婚を承諾したんだ?」


「騎亜さんはそう言ってますけど……?」


「えっ……約束したじゃん!!」


「約束は約束でも所詮は口約束だ。結婚したいなら先ずは俺を堕としてからだな。まぁ無理だと思うが……」

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