第10話 豹変
「あー、やっと配信が終わったー。」
「そうだねー、ハンバーグが丸焦げにならなくて良かったー。」
俺達はそんな、仕事終わりのゆったりとしたやり取りをする。
「何時間ぐらい配信してたんだろう……ってもう夕方か……」
窓を見ると、空が赤く染め上げられていた。
「ねぇねぇ、前から気になってたんだけど、その写真に映ってる人誰?」
いきなり、天羽がそんな事を尋ねてきた。
天羽が指差した先にある写真には俺と咲凪が映っている。
「あれは俺のスタッフの神崎咲凪だ。まぁ、仲良くさせてもらってるよ。」
「恋人とかじゃあないよね。」
そう、天羽が抑揚の無い声で聞いてきた。
今まで普通に話していたのに急に抑揚の無い声になったので俺は少しビビりながらも、答えた。
「ま、まさか、そんな関係じゃあないよ。」
「なぁ、俺は何か天羽を怒らせるような事をしたか?」
俺がそう言った瞬間、目の前が真っ暗になった。
暗闇の中を歩く……何時間ぐらい経っただろうか……この空間に終わりがやってくる気配がない。
そもそも、ここは何処だろうか……
俺は何故こんな所に居るのだろうか……
そんな疑問が頭の中でこだまする。
刹那、暗闇の中に一筋の光が現れた。
その光は徐々に大きくなっていき、やがて俺を包み込んだ。
そして、俺は目を覚ました。
どうやら寝てしまっていたようだ。
そこで、俺は違和感を覚えた。
何故俺はベットに居るのだろうかと……
俺はベットから立ち上がろうと試みた。
しかし、両手両足が全くと言っていい程動かなかった。
「何が起こっているんだ!?」
俺が叫ぶように言うと、寝室の扉が開いた。
そこには、無表情の天羽が居た。
俺は悲鳴を上げそうになったが、それを何とか堪え、口を動かそうとしたが、口をガムテープで抑えられてしまった。
「えーと、私を怒らせるような事をしたかどうかだったっけ?それの答えは勿論はい。あの日、約束したよね?忘れたとは言わせないよ。」
あの日……?
俺は豹変した天羽に恐怖しながらも、思い出そうとした。
だが、余りにも手掛かりが少なく、思い出せるわけ無かった。
「結婚しようって約束したよね。」
あー完全に思い出した。
確かに約束はした。
でもそれはかなり昔の事だ。
ほぼ冗談見たいなものだろう。
「なのに騎亜は、他の女と……」
その途端、天羽が自分の背後からギラリと銀色に光る包丁を取り出した。
それを包丁だと認識した瞬間、急に嫌な汗が吹き出してきた。
俺は逃げ出そうと縛られている手足をがむしゃらに動かした。
「逃げ出そうとしても無駄だよ。」
包丁が俺の首に近づいてきた。
俺は再び意識を失ってしまった。
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