第7話 スーパーマーケット

 「えーと……久しぶり?」


なんとなく、友達の友達と2人きりで居るような感じがする。

この例えは的確なのだろうか……


「取り敢えず、玄関で話すのもアレだし上がって。と言うか一応コラボ相手だしもてなすよ。」


「ありがとう。」


天羽はそう言って靴を脱ぎ、家に上がる。

きっちり靴を揃える律儀なところは昔と変わってないようだ。

俺は少しだけ安心した。

そして、俺は天羽を配信部屋まで案内する。


「きれいな部屋だね。」


「まぁ、片付けたからな……ちょっとお茶を用意するよ。」


おもてなしの心はいつも忘れない。

と言っても少しでもこの気まずい空気から抜け出したいという思いもあるが……

俺はキッチンに行き、客用のコップを取りそこに冷たいお茶を注ぐ。

別に高級なお茶とかではないが俺はこのお茶を気に入ってる。


「はい。どうぞ。」


「ありがとう。」


……暫く、沈黙が続く……こんな事例は他にあるのだろうか……


「今日の配信は何をするんだったっけ?」


俺はなんとか沈黙を突き破ろうと配信の話をする。


「決めてないよね。」


「そう言えばそうだったな。じゃあ何する?」


今の状況は行き当たりばったりと言う言葉が1番似合うだろう。


「雑談配信とか?」


「あーそれ最近やったんだよね。だから別のが良いな……料理配信とか?」


俺は普段、あまり料理はしないが急に料理配信が頭に思い浮かんだ。


「それ良いね!でも、あるの?材料とか……」


「少ないな……買いに行くしかない。」


いくら幼馴染みとは言え、コラボ相手に買いに行かせるのは未読無視するぐらい人間として終わってるから俺は1人で買いに行こうと立ち上がった。

しかし、天羽が俺の手を掴み引っ張った。


「一緒に行こうよ。久しぶりに……」


「別に良いよ……来なくても。コラボ相手はもてなすし。」


「私が一緒に行きたいの!良いでしょ?」


天羽は上目遣いでそう言ってきた。

(不覚にも可愛いと思ってしまったのはまた別の話……)

本人が望んでいるなら断る理由も無いし良いやと俺は思った。

強いて言えば気まずいだけだ。


「じゃあ一緒に行こう。」


そんなこんなで俺達は近くのスーパーマーケットまで買い物に行くことになった。


 スーパーマーケットにて、店内は様々な親子連れや主婦がたくさん居た。

店内独特の喧騒が耳を貫くというのはどうでも良い。

俺は何故か天羽と手を繋いでいる。


「なぁ、何で手を繋いでるんだ?」


「幼馴染み同士で手を繋ぐのは当たり前でしょ?」


俺はかつての記憶を辿る。

天羽はこんなに大胆な感じだっただろうか……いや、そんな記憶はインプットされていない。

俺は困惑したが合わせるしかないだろう。


「……ところで料理配信で何を作るんだ?」


「ハンバーグかな。」


俺達はハンバーグの具材を求め、店内を歩き回った。

その間、ずっと手を繋いでいた。

正直、かなりドキドキした。

このままでは心臓が持たないので俺は急ぎ目でセルフレジで会計を済まし、店を出た。

結局、店から家まで、俺の片手が自由になることは無かった。

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