第5話 豪雨のお泊り会②

 それは、2人でリビングに居るときのことだった。


 ザーザーと雨は止むことを知らない。

それは永遠に続くのではないかと錯覚させるほどだった。


「明日ってなんかあったっけ?」


雨とは裏腹にポツリと俺は独り言を零した。

しかし、すぐに独り言ではなくなった。


「明日はコラボじゃないですか?」


コラボか……人見知りの俺には少しきついところがあるが―――相手が異性なら尚更だが―――1度はやってみたかったんだ。

それを思い出した途端、早く明日になってくれと願うようになってしまった。


「そうだったな。ところで……今日は何処で寝るんだ?」


「えっ?普通にソファーでですけど……他にあるんですか?」


「咲凪は、俺のベッドで寝ろよ。スタッフに体調を崩されたらたまらないからな。」


「いえいえ、私がソファーで寝ますよ。配信者の体調も管理するのがスタッフの仕事なので……」


意見が対立してしまった。

こうなると、主に語彙力の高さが重要になってくる。

上手く相手を言いくるめるためだ。

俺は配信者だこちらが多少優勢だろう。


「いつも世話になってるからさ!ベッドで寝てくれよ。」


「こっちだって世話になってますし……」


お互いに譲らない。

決着もつかない。

語彙力のレベルがほぼ等しいのだろう。

咲凪も配信をしていたのだろうか……

勝負は平行のまま進んだ。


 体感時間数時間後、このままでは一夜が明けてしまうと悟った俺はある提案をした。


「もう、一緒に寝るか?」


それを言うと、咲凪は何故か顔を真っ赤にしたが断わらなかった。

そして、今に至る。

不意に咲凪が寝返りを打ち、互いの顔がキスをするぐらいの距離まで近づいた。

俺はすぐに反対方向を向こうとしたがその必要は無かった。

何故なら咲凪が、また顔を赤くして寝返りを打ったからだ。

起きているのだろうか……

だが、わざとこっちを向く理由がない。

多分、寝ていて夢を見ているのだろう。

こうやって考え事をしている訳だが一向に睡魔がやって来ることはなかった。

他にも、雨音をオルゴールに寝ようとしたがそれも失敗に終わった。

詰まるところ、夜更かし確定演出である。

俺は寝るのを諦めてリビングに行こうと立ち上がろうとしたが、後ろからクイッと引っ張られる。


「寝てください。」


咲凪が、小さくそう零した。


「起きていたのか……」


「いいから、速く寝てください。」


「寝たら良いのか?」


「そうです。」


「寝れる気がしない。」


俺は咲凪の手を無理矢理引き剥がしてリビングに行こうとしたがそれは叶わなかった。

そもそも咲凪の手を引き剥がせなかった。

半引き籠もりの俺にはそこまでの力がなかった。

仕方なく俺は咲凪の命令に従うことにした。

明日のコラボは大丈夫だろうか……

それだけが心配だ。


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