第69話 信用ゼロ、そして告白!?
アイリス、リコリス、ナナの三人とともに外へ出る。
今日は国王陛下の誕生祭。
外はまさにお祭りムード。
そこかしこで花弁が舞い、多くの住民たちが楽しそうに騒いでいた。
この日ばかりは無礼講だ。
平民も貴族も王族さえも関係ない。
現に俺を含めたアイリスとリコリスは王族だ。
ナナが平民という集まり。
それでも変装してまで平民たちに混ざって祭りを楽しむ。
今日はそういう日だ。
「一年ぶりですが、相変わらず賑やかですねぇ、誕生祭」
「それはもう。陛下の誕生を祝う日ですよ? 国民すべてが喜びを分かち合うべきかと」
「我が国はそこまで大々的には行いませんもの。羨ましいかぎりですわ」
「プロミネント小王国は土地が少ないからな。王国に比べたら見劣るだけで、そっちの祭りも面白いだろ」
俺も二人の会話に混ざる。
確か、プロミネント小王国の誕生祭は、国王に感謝するとともに神へ炎の祈りを捧げるお祭りだった気がする。
だから派手さでいえば向こうも負けていない。
俺は原作の知識として知ってるだけだが。
「あら……ユウさんは我が国の誕生祭をご存知なのですか?」
「さすがに見たことはないけどな」
「でしたら今度の誕生祭にはぜひお越しください。わたくしと一緒にデートしましょう」
「で、デートぉ!?」
アイリスが目を見開いて狼狽える。
そんな分かりやすく感情を表に出すとからかわれるぞ。
現にリコリスはにやりと笑っていた。
「どうかしましたかぁ、アイリス。わたくしとユウさんがデートしても何ら不思議はないでしょう? ユウさんにはお世話になってますし」
「おおお、お世話ぁ!? ユウさん! リコリスに何をしたんですかッ。ハレンチです」
「冤罪すぎるだろ……」
俺はリコリスに何もしてないよ。
それはアイリスがよくご存知かと思っていたが、焦った彼女は冷静じゃなかった。
俺の胸倉を掴んで激しく揺さぶる。
「私が知らないところでイチャイチャしてたんですね!? そうでしょう!?」
「違う違う。ちょっとリコリスと一戦やりやっただけだから。プライベートじゃそれ以外は会ってないよ」
「ほ、本当ですか……?」
「マジマジ。俺が嘘吐くわけないじゃん」
「信用できません」
「俺はいま、深く傷ついた」
「自業自得って言葉、知ってます?」
「よーく」
それはもう、よーく知ってる。
俺のこれまでの行いは反省の連続だからな。
一度も反省したことはないが。
「あははッ。なるほど。あなたたちはそういう関係なんですね」
「どういう関係だよ」
「面白いと思いますよ。わたくしも混ぜてほしいくらいです」
「り、リコリスも!?」
「ええ。ユウさんとの間に子供を授かれば、きっとその子はお互いの才能を引き継いだ天才となるでしょう。国の利益としては見過ごせないかと」
「国の利益、ねぇ」
確かにリコリスが言うように、俺の才能を引き継いだ子供が産まれれば国の宝になる。
母体となるリコリスの才能も確かだ。
その間に生まれた子が凡人なわけがない。
この世界の常識として、優秀な者同士がくっ付くことはよくある。
貴族同士が縁を結ぶのだって、お互いの家の関係を良好にするのと、才能ある子供を作るためだ。
俺が知る世界のように自由恋愛はあまり許されていない。
まさに平民だけの特権だ。
俺も元第三皇子。帝国の王族。国の利益になることを許容——するわけがない。
すでに帝国から離れた。あの国は関係ない。
では王国のために?
いやいや。そんな理由でアイリスを縛りたくはない。
だから彼女から好意を受け取っても素直に答えられないのだ。
いつかアイリスには、もっと相応しい相手が現れるかもしれない、と。
なぜなら俺は原作のラスボス。
本来はアイリスと付き合うことは絶対にない存在なのだから。
原作においてアイリスが誰かと付き合い、幸せな人生を歩むのなら……その邪魔をしては本末転倒だ。
好きだからこそ身を引く。
それもまた俺の選択の一つだ。
その点でいえばリコリスの提案は意外にも悪くない……かも?
リコリスの性格上、割り切った恋愛ができそうだし。
「俺の個人的な意見を言わせてもらうなら、恋愛はある程度自由にすべきだよ。本当に幸せになれると思った相手と結婚したほうがいい」
「王族とはいえない発言ですわね」
「元だからな」
「気持ちは分かりますが、王族に自由なんて……」
「相手のことを思い遣ればいいさ」
「思い遣る?」
「ああ。相手のことを好きになればそれは純愛だ。貴族や王族の間にだってそういう感情がないわけじゃないだろ?」
人の幸せはそれぞれ。
政略結婚だろうと相手を好きになる可能性はある。
俺が言いたいのは、好きになる努力もまたしてみるといいってこと。
「なるほど……ではユウさん」
「ん?」
「わたくし、あなたを好きになってみようと思いますね!」
「ッ!?」
アイリスが絶句する。
リコリスは笑顔で爆弾を投下してきた。
「お前……俺の話聞いてたの?」
「もちろんですわ。要するに、わたくしがユウさんのことを心の底から好きになればすべて問題がなくなるってことですものね!」
「そりゃそうだけど……」
だからっていきなりそんなこと言うかね。アイリスの前で。
見てみろアイリスの顔を。
いまにも泣きそうだった。
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