第26話 侵入、そして殺戮

 ダンジョンの入り口を見張っていた謎の灰色のローブの男性たちを無力化する。


 二人は揃って俺に殴られ、地面に転がった。


「ったく……人のことを不審者って言う前に、自分の格好を省みろっての」


 お前らも十分すぎるくらい不審者だったぞ。


 ぱんぱん、と手に付いた汚れを落として振り返る。


 少し離れたところには、ここまで俺を案内してくれたオークの死体が。


 見るも無残に焼かれていた。俺はそいつの前で両手を合わせる。


「南無南無……今夜は豚肉を食べるよ」


 そう宣言してオークを弔った。


 そして、


「……で? お前らは誰なわけ?」


 勢い余って気絶させた男たちを掴む。


 被っていたフードを外して素顔を確認すると、何の変哲もないただのおっさんだった。


「そこは美少女であることを期待していたが……声からして男だったしなぁ。しょうがない」


 とりあえず何か身分を証明する物がないかどうか調べるために男の懐を弄った。


 なんだかちょっぴりよくないことをしてる気分になる。


 しかし……。


「んー……特に何も持ってないな。あるのは魔法を使えるようにするアーティファクトだけか?」


 いくら懐を弄っても特に面白いものは出てこなかった。


 もうひとりのほうも漁ってみるが、やはりアーティファクト以外は出てこない。


「チッ! しけてやがるぜ……これで女の子だったら最高だったのに」


 もう一度愚痴を吐いてから、気絶した男たちを放り投げる。


 もうコイツらには用はない。かと言ってこの場に放置して逃げられても面倒だ。


 そうなると、取るべき方法はたった一つ。


 リスクを減らし、なおかつデメリットのない方法。それは……。


 すらり、と腰に下げた鞘から剣を抜く。そこから先は、もう、説明はいらなかった。




 ▼△▼




 入り口を見張っていた帝国の兵士と思われる男性二人を処理して、俺はダンジョンの中に入った。


 ここは洞窟型のダンジョンだ。薄暗く、嫌な臭いが奥のほうから漂ってくる。


「血の臭い……それ以外にも腐った死体みたいな臭いがするな……」


 俺は実際に嗅いだことはないが、ユーグラムの記憶にその臭いはあった。


 ダンジョン内でモンスターを殺して放置でもしているのか? それに何の意味があるのかさっぱり理解できない。


 おまけに、ダンジョンにしては不自然なくらい——魔物が出てこなかった。


 もうそこそこ中を歩いているから、魔物の一匹とくらい出会ってもおかしくないのに。


「ほとんど奥にいるのか? うーん……」


 こんな展開、原作にはなかった。


 イベントが早まったことも含めて、どう考えても本来のイベントとは異なる進行の仕方をしている。


 一体このダンジョンの奥で何が行われているのか……ゆっくりと奥を目指して歩いていった。




 しばらく歩くと、ようやく敵とバッティングする。


 魔物じゃない。見張りの帝国兵と遭遇した。


「あ」


「なっ!? だ、誰だおまっ——」


 シュッ。


 一瞬で帝国兵の声が消える。


 相手が俺に気付いたときには、もう剣を振っていた。


 首を寸分違わずに落とす。声を封じ、なおかつ殺すには首を狙うのが一番だ。


「しまった……生かしておかないと情報が吐かせられない」


 捕まえてから先に情報を絞り取ったほうがよかったかな? まあいいか。どうせこの先にも虫のように沸いてるだろうし。


 気を取り直してさらに奥へと進む。


 すると、俺の予想通りに帝国兵が何人もいた。どうやらそろそろ終着点が近いと思われる。


「——し、侵入者だあああああ! 侵入者が出たぞ————!」


 そこで初めて帝国兵たちは俺の存在に気付く。


 周りが薄暗いから視認が遅れるんだ。明かりくらい点けておけよ……。


 活きのいい若者以外は全員殺していく。ほしい情報はひとりから聞ければ十分だ。口裏を合わせられても困るし。


 剣を振って次から次へと灰色ローブの男たちを斬り殺していく。


 中には女性もいたが、時間がもったいないので普通に殺す。


 やがて残ったのは一人の男性だけになる。その男の首を掴み、


「おい。お前らはここで何をしているんだ? 面白そうだから俺にも教えてくれよ」


 尋問を開始した。


「ぐ、ぅ……! だ、誰が貴様のような奴に……!」


「あっそ。別に無理して言わなくてもいいよ。他にも仲間はいそうだし、——何より」


 シュッ。


 男の手首を切断した。痛みと血が大量に噴き出す。


「ぎゃあああああ!? お、俺の腕があああああああ!?」


「答えないと少しずつバラす。逆に答えたら、お前の怪我を治してやってもいい。俺は凄腕の医者だからな。手首のひとつくらい簡単だ」


「ああああああああ!」


「おい、だから話を……」


 男は俺の問いには答えなかった。ひたすら痛みに狂いながら、やがてその命を落とす。


 ぷらん、と手足が力なく垂れた。それは男の死を意味している。


「……ったく。めんどくせぇ」


 男を放り捨てると、俺は改めてダンジョンの奥を目指した。


 そろそろボスみたいなやつ出てこいよ、と期待しながら。




———————————

あとがき。


空前絶後に体調が悪く、もしかしたら更新が滞るかもしれません……

気合いで書きますが、更新なかったら察してください

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