第23話 説明、そして約束

 仮面を外して村長宅の中に入る。


 すると、村長の奥さんが、


「あらあらまあまあ! 仮面の中はそんなに整った顔立ちをしていたんですねぇ!」


 と感嘆の声を漏らした。


「それほどでもあります」


「顔だけは、まともですからね……」


 なんだいアイリスくん。その実に含みのある言い方は。


「ささ、こちらに座ってください。あいにくとお茶しか出せませんが……」


「いえいえ、お気になさらず。我々はお話を聞きに来ただけですから」


「では、早速……」


 俺たちが席に座ったのを確認して、村長が話を始める。




「今回、アイリス様が来てくれたのは、村の近くで見られるようになった魔物の件で間違いないでしょうか?」


「はい。冒険者ギルドに届けられた依頼ではありますが、定期的な見回りは騎士の務め。私も騎士ですから、その仕事を全うする責任があります」


「ありがとうございます。アイリス様がいてくれるなら百人力ですな」


 村長さんはアイリスに深々と頭を下げた。そして、


「しかし……アイリス様が参加してくださるほどの内容かと言われると、疑問が残ります」


「そこはご安心を。私も魔物を数体倒すだけの依頼とは思っていませんから」


「と言うと?」


「ユウさん、お願いします」


 続きは俺に任せられた。


 事情を知ってる……というより、アイリスに話した俺が適任か。


 おほん、と咳をしてからアイリスに代わって話す。


「ここから先は俺が説明をします」


「ゆ、ユウさんが敬語を使ってる……」


 おい、茶化すなアイリス。


「まず、俺は今回の件を重要視しています」


「じゅ、重要視?」


「恐らくですが……この村の近くにダンジョンが生まれた可能性があるかと」


「ダンジョン!? そ、そんな……何かの間違いでしょう」


「まだ確定してはいません。ですが、見回りに来た騎士が中型の魔物とも遭遇してますし、可能性は決して低いないかと」


 というかもうほぼ確定してる。俺の中では。


 原作でも村の近くに本来は出てこない個体が現れた、という一文があったはず。


 それと照らし合わせると、間違いなく今回の件は原作のイベントだ。


 予想より二年くらい早いが、俺がいなくなったことでシナリオが変わった可能性は高い。


 だからこそ、俺には解決する義務がある。


「そんな……村の近くに、ダンジョン……」


「まだ確定はしてませんよ。それに、ここには王国の宝であり、神の御子と称されるアイリス様がいます。彼女が協力してくれるなら、ダンジョンのひとつやふたつ、簡単に潰すことができるでしょう」


「お……おお!」


 村長さんはアイリスに希望の眼差しを向ける。


 アイリスもまた、そんな村長に視線を合わせにこやかに笑った。


「お任せください、村長。必ずや私がこの村に平穏を届けます」


「そのためには調査に入りたいのですが、ここで村長さんにお願いがあります」


「お、お願いですか?」


「この村の防衛に関しての話ですね」


「防衛……」


 村長さんはあまりパッときていない。


 まあ、そりゃあそうか。これまでかなり平穏な日常を送ってきたのだろう。そこに防衛と言われても困惑するはずだ。


「もし俺の予想通りにダンジョンが発生している場合、ダンジョンから魔物が出てきて、この村に押し寄せる可能性があります。そうなると……まともに防衛力のない村では……」


「き、危険だっ!?」


 すぐに村長さんは理解してくれた。俺が頷く。


「そうです。大変危険です。なので、急いで村人を集め、この村の周りに壁や柵などを設置してください。それらしいものはありますが、あれでは心もとない。しっかりと補強しておいてくださいね」


「わ、わかりました!」


「ありがとうございます。その間に俺は、村の近くを探索し、ダンジョンの発見を目指します」


「よ、よろしくお願いします! この村を、どうか……!」


「もちろんです。必ず俺が……守ってみせましょう」


 不安げな村長さんに笑みを見せ、席を立つ。


 早速、俺はダンジョンの調査を始める。


 アイリスは……。


「私もついていきます」


「ダメだよ」


「どうしてですか?」


「この村には、まともに魔物と戦える人はほとんどいない。そんな状態で、俺がいないのに魔物が押し寄せてきたら困るだろ?」


「まさか……私に残って守れと?」


「村人もアイリスがいてくれたほうが安心するだろうしね。よろしく頼むよ」


「…………」


 アイリスはものすごい不満顔を浮かべたが、自分の役割を理解して気持ちを抑えてくれた。


 俺の手を握り、


「ちゃんと……」


「ん?」


「ちゃんと、戻ってきてくださいね? どこにも行かないでください。私から逃げたら……殺しますよ」


「怖いって」


 アイリスの目がマジだった。


 この前のデート以来、彼女の好意? がものすごく露骨になったような……下手するとヤンデレ路線入ってませんか?


 不安そうな彼女に、しかし俺は笑みを浮かべてその柔らかな手を握り返した。




「……でも、安心しなよ」


「はい」


「俺は——」


「最強ですからね」


「……ははっ」


 お決まりの台詞が取られてしまった。けど、彼女が信じてくれるなら……俺は本当に誰にも負けないよ。




 だって、ラスボスだもん。


 主人公アイリス以外には絶対に負けはしない。




———————————

あとがき。


ダンジョンデートはしません!また今度!

(ユーグラムが強すぎて秒で終わるため)


なんかアイデア考えておきますね!


※予約投稿忘れてましたごめんなさい!!!!ちゃんとストックも作ってます☆

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