第14話 運命の出会い、そしてライバル?

「ひ、酷い目に遭った……冗談だったのに……」


 アイリスからの猛攻をなんとか凌ぎきった俺は、疲れて今度こそその場に腰を下ろす。


「あなたがつまらない冗談を言うからです。本当なら死罪にしてもよかったんですよ?」


「罪重くね……!?」


 戦慄した。


 この国の法は、王族によって自由に書き換えられるのか!?


 横暴だぞ! 恐怖政治反対! 帝国と同じじゃないか!


「それより、どうして打ち合いのときに攻撃してこなかったんですか?」


「え? いや……さすがに王女様には攻撃できませんよ」


「そういうのはいいです。私は対等にあなたと戦いたい」


「無理でしょ。諦めてください。王族と亡命したなんちゃって皇子の俺じゃ、身分的に釣り合わない。何か起きたら責任取れないって」


「真剣勝負に責任などありません!」


「それはアイリスの意見でしょ。周りがどう思うかはまた別だ。自分が特別な存在だという自覚を持ったほうがいい。お前の命は、他の誰よりも重い」


 たとえアイリス以外の国民が死のうと、彼女さえ生きていれば希望はある。


 逆に、アイリスが死んだら誰が生き残ろうと地獄しか待っていない。


 すべてを背負った主人公っていうのはそういうものだ。


 ちなみにラスボスを辞めた俺がどの口で説教してるのかと言うと、呆けた顔でしてる。仮面付けてるけど。


「…………ユウさんの仰る意味は理解できます。私も、他の人たちと同じになれないことはわかっています」


 それでも、とわずかにアイリスの口調が荒くなる。


「それでも! あなたにだけは真摯に対応してほしい! 同じ運命を背負ったあなただからこそ、私は……!」


 それは一種の願いのようなものだった。


 幼い頃からユーグラムが抱えている不満——心の孤独と同じ。


 彼女もまた、特別な才能と特別な役割を持って生まれたがゆえに、ずっと孤独だったのだ。


 そこへ同じ役割を背負ったユーグラム……俺がきた。


 気分はさながら、世界でたったひとりの友人を見つけたかのよう。


 期待し、歩み寄りたいというアイリスの気持ちは理解できる。


 もしかすると、ユーグラムとアイリスは出会いさえ間違っていなければ……仲良くなれたのかもしれない。


 ラスボスと主人公なんて括りをなくせば、お互い以上にお互いを理解できる者はいない。




「……わかりました。次からは真面目にボコします。それでいいですか?」


「ユウさん! 言い方はムカつきますが、ぜひそれで! 真剣勝負でだからこそ本当の経験値になるんです!」


 アイリスはグッと拳を握り締めてやる気を見せる。


 別に怪我をさせようってワケじゃないが、アイリスはどこまでも前向きだな……。


 そのテンションに俺まで感化されたらしい。微妙にやるせなかった。


「——あ、でもひとつだけ条件が」


「条件、ですか?」


「俺があなたに勝つ度に……おっぱいを揉ませてください! パンツを見るでも可!」


 バシーン!


 問答無用で木剣が振り下ろされた。


 それを白刃取りする。


「……なにするんですか、アイリス様。危ないじゃないですか」


「すみません。目の前の馬鹿が馬鹿なことを言うものですから手が滑りました」


「いい狙いでしたね」


 滑ったにしては狙いが正確だった。


「簡単に防がれると余計にムカつく……」


「それはもう理不尽ですって」


 やれやれ。王女様の相手も大変だな。


 ギリギリと力がどんどん木剣に込められていく。


 それを白刃取っているあいだに、コツコツと靴音が聞こえた。


 俺が振り返ると、視線の先にはひとりの男性が。


 男は俺を見るなり、目付きを鋭くした。なんとなく嫌な予感がする。




「おい、お前」


「ん? 俺?」


「お前だ。お前はアイリス様のなんだ? ずいぶんと仲良さそうに見えるが」


「そういうお前は誰だよ」


「ッ! 貴様……俺を公爵子息だとわかっていて言ってるのか?」


「生憎と外人なんでね。お前の面なんて知らん」


「ユウさん。こちらの方は、この国でも最高位の貴族の子息ですよ。口には気を付けてください」


 最高位貴族ねぇ。


 公爵と言ってたしそれくらいはわかるが、俺が見覚えないってことコイツモブじゃん。


 ……いや待て?


 たしか本編にこんな感じの奴が……。


「あ! お前、アイリスの元婚約者候補?」


「ユウさん……」


「おっと。すみませんすみません。てめぇ様はアイリス様の元婚約者候補でしょうか? こら」


「あんまり変わってません」


 だって知らない奴に敬語とか難しい……俺、異世界人だし(言い訳)。


「こ、この俺に向かって……な、舐めた口を! 貴様など、俺の一声で潰せるというのに!」


「落ち着いてください、コンラッド公爵子息様。彼は私の護衛です。無用な争いはやめてください」


「そこの護衛がふざけた態度をしているからでしょう! 私は悪くない!」


「私が言い聞かせておきます。どうか、ここは矛を収めて」


「…………ッ!」


 悔しそうに奥歯を噛み締めたコンラット公爵家のモブ。踵を返してどこかへ消えた。


 結局、アイツは俺に何の用だったんだ? どうせ文句でも言いにきたんだろうけど。




———————————

あとがき。


テンプラ(テンプレ)を揚げておきますね!

まあ、いまのところ宙に浮いてる感じのキャラですが()


※※※※※

週間総合1位!輝きました!トップに!

応援してくれた皆様!ありがとうございますうううう!!!


ユーグラム「1位ってことは最強だな」

アイリス「読者の皆様に感謝です!」

ユーグラム「では、ファンサービスで乳を揉ませろ」

アイリス「殺しますよ」

ユーグラム「はい」

ナナ「じゃあ代わりに私のを」

アイリス「ユーグラム様……(虫ケラを見る目)」

ユーグラム「冤罪だ⁉︎」

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