第11話 学園、そしてパンツ

 俺とアイリスの日常に、元暗殺者のナナが加わった。


 特にそれで何かあるわけでもなく、俺のやるべき事に変わりはない。


 今日も今日とて、俺はアイリスの早朝訓練に巻き込まれていた……。




 ▼△▼




「はああああっ!」


 アイリスが木剣を構えて突っ込んでくる。


 鋭い斬撃が放たれた。それを同じ木剣ですべて捌ききる。


 勢い余った彼女の足を払えば、——それだけでアイリスは地面に倒れた。


「きゃっ!?」


「はい、これで俺の三連勝~。早朝訓練終わり~」


「くぅっ! なんで一発も攻撃を当てられないんですか! 強すぎますよ、ユーグラム様!」


「ふふ~ん。言っただろ? 俺は最強なんだよ」


 ユーグラムのスペックの高さは何も魔核だけじゃない。


 身体能力も、研鑽した剣術・体術も他の追随を許さないのだ。


 さすがラスボス。ニュービーの俺でも本能に従って動けば主人公を手玉に取れる。


「ぐぬぬぬ……! もう一本!」


「ダメに決まってるだろ。そろそろ朝食の時間だ。それ食べてしっかりに行くぞ」


 昨日、寝る前に知ったが、どうやらアイリスは王都にある学園に通っているらしい。


 原作でもそんな設定あったなぁ、と俺も思い出した。


 彼女の場合、騎士としての仕事もあるため、月に数回、多くても10回くらいしか学園には登校できない。


 それって行く意味なくない? とかそういう野暮なツッコミはなしだ。学校は勉強するだけの場所じゃないしね。




「朝食は最悪抜いても……」


「ダーメ。お前はよくても俺は嫌なんだよ。それに、しっかり食べないと大きくなれないぞ」


「成長はしています。平気です!」


「おっぱいはそんなに大きくな——ふげっ!?」


 木剣で頭部を殴られた。


「お、おまっ……さすがにそれはシャレになってねぇ!」


「女性に向かって失礼なことを言うからです。あと私は平均ですよ」


「ほほう……? ならばもう一度揉ませろ。話はそこからだ」


「腕を斬ってもいいなら構いませんよ」


「チッ」


 残念。


 アイリスの顔面と体型は好みだから揉めたら嬉しいのに。


 まあいいか。


 ユーグラムはイケメンだし、をしようと思えばできるはずだ。いつでも。


 その証拠に……。


「アイリス様、ユウ様。お食事の準備が整っております」


「おっ、ナイスタイミング。ありがとテレザさん。今日も綺麗だね」


 仮面を付けていない状態でメイドのテレザさんの手を握り締めると、彼女は顔を真っ赤にした。


 アーティファクトの効果で外見こそ少し異なるが、美貌に差はない。


「ゆ、ユウ様!? か、顔が……ひえっ」


 メイドのテレザは明らかに狼狽えていた。ちょっと面白い。


「メイドに手を出さないでください」


 ゴツンッ。


 またしても木剣で頭部を殴られる。


 魔力でガードしてるからダメージはないが、アイリスも酷いことをする。




 その後はアイリスと共にダイニングルームへ。


 朝食を摂ってから学園へと向かった。




 ▼△▼




「ここがアイリス殿下の通ってる学園か~。いいね」


 準備を済ませた俺たちは、仲良く揃って学園の正門をくぐる。


 一本道を歩きながら、前方にそびえる校舎を眺めて感想を述べた。


「くれぐれも暴れないでくださいね? この学園には多くの貴族子息、令嬢がいますから。というか、なんでまだ仮面を付けて……」


「ちょっと校舎の探検いってくるわ! アデュ~!」


「あ、ゆ——ユウさん! 人の話を……!」


 アイリスが手を伸ばしてくるがもう遅い。


 俺はすたこらさっさと校舎の中に走っていった。











「アイリス様、いくら王族とはいえ、このような真似をされては困ります」


「申し訳ございません……私の護衛が勝手な真似を……」


 校舎の探検を始めて10分。




 最初に遭遇した職員に捕まった。




 不審者と思われたらしい。仮面を付けているだけで拘束されるってマ?


 この世界は不審者に厳しいな。


「まあまあ。アイリス殿下もこう言ってますし、許してあげてくださいよ」


「殺しますよユウさん。あなたが言わないでください」


「はい」


 睨まれたので黙ります。


 俺の体を縛る鎖をアイリスが握り締めた。


 どうやら拘束は解いてくれないらしい。


 強制的に引きずられながら廊下を移動する。


「まったく! 言ったそばから問題を起こして……! あなたは何がしたいんですか!?」


「だから探検だってば。子供心が疼くだろう?」


「何歳ですか」


「15歳だ」


「無駄に堂々としてますが、普通に恥ずかしいですからね? 大人しくしててください。これから授業も始まります」


「俺には関係ないし退屈だよ。お前が授業受けてる間は探検してもいいだろ?」


「どうせすぐに捕まると思いますよ」


「チッ! あの男……次会ったらボコボコに——」


「ユウさん?」


「ごめんなさい」


 冗談だって。


 お尋ねものの俺がそんな真似するわけないだろ?


 つうかさっきからずっと気になってるんだが……。


「なぁ、アイリス殿下」


「はい? なんですか」


「この体勢だとパンツが見えてる」


「ッ!?」


 アイリスがぴたりと動きを止めて鎖を手放した。素早い動きで後ろに下がる。


 顔が真っ赤になっていた。


「また白だな。素晴らしい。清楚なアイリス殿下には白こそがよく似合っている。だが、俺は黒も好きだよ!」


「殺します! やっぱりここで死んでください!」


「ぎゃあああああ!」


 王女殿下がご乱心!


 真剣を抜いて魔力まで解放していた。


 その状態でぶんぶん剣を振り回す。


 当たったらマジでシャレにならない状態だ。


 慌てて、鎖で縛られたまま逃走する。




 俺たちの鬼ごっこは、途中で教員に見つかって叱られるまで続いた……。




———————————

あとがき。


誰がなんと言おうと……アイリスのパンツは白だ!!!(お好きな色に変換してください。パンツは平等です)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る