第10話 セクハラ、そして仲間入り

 ユーグラムくん15歳。


 思春期につき、おっぱいを揉みました。


 それがアイリスにバレる。


 IQ200ばりの誘導尋問を受けた俺は、絶賛、剣を振りかざすアイリスから逃げていた。




「待ちなさい、ユウさん! 気絶した女性の胸を触るなんて……!」


「犯罪者! そいつ犯罪者だから! 情状酌量の余地は!?」


「ありません! 罪は平等です!!」


 ぶん。ぶんぶん!


 近付くたびに剣を振り回す。


 俺は魔力で服ごとガードできるが、ちょっと楽しかったのでこのまま走り回る。


 しばらくすると、アイリスの体力が先に尽きた。


「ハァ……ハァ……あ、あなた……体力まであるんですか……」


「最強だからね」


 原作最強のチートキャラを舐めないでほしい。


 文武両道を地でいくよ?


 セクハラはするし、誘導尋問にも引っかかるけど……。


「まったく……ハァ……そんなに女性の胸に興味があるんですか?」


「当たり前だろ!? 興味のない奴はいない! ちなみに下着だって見たい!」


「力説しないでください」


 アイリス、ドン引きである。


「以前、私のパ……下着を見たじゃありませんか」


「あー、初めて剣を合わせたときに見た、あの白——」


 ひゅん。


 目の前スレスレを剣が通り抜けた。


「それ以上はよくない。お別れの時間になりますよ?」


「過激すぎぃ」


 暴力はよくないよ暴力は。


 パンツを見たときも、ガン見したのバレて殺されそうになったし。


 そういうヒロインは、今のご時勢、流行らないんだ。


 最近の流行はデレデレヒロインよ。


 まあ俺は、アイリスのツンデレが大好きだけどね。


「というか、私の下着を見たんですから我慢してください。他の人に手を出すのは」


「それって私の下着だけ見ろってこと?」


「~~~~!?」


 剣を構えるアイリス。顔が真っ赤だった。


「ハハハ。冗談冗談。嘘だよ」


 やめてくださいと訴える。


 すると彼女は剣を下ろし、ゆっくりとこちらに歩み寄った。


 目の前にアイリスが立つ。


 彼女は俺の手を掴むと、おもむろに——当てた。


「——はうあっ!?」


「なんで触れてる側のあなたがそんなに驚くんですか……」


「いや、だって……いきなりすぎて……」


「私で我慢してください。た、たまになら……その……あの……ッ~~~~!」


「かわいいいいいいいい!」


 萌えた。


 俺は萌えて燃えた。


 それが彼女の独占欲か、正義感かはわからないが、照れながらも胸を揉ませてくれる彼女に俺は痺れた。


 だが、


「ありがとう、アイリス。でも見損なわないでくれ。俺はいきなり君の胸を揉んだりしない!」


「いま揉んでますよね? おもいきり」


「くっ! 俺の右手が勝手に……柔らかいわ」


「もういいでしょ!」


 バッと手を無理やり引き剥がされる。


 悲しそうに俺の右手が虚空を揉んだ。もみもみ。


「これでしばらくは我慢してください! 耐えられなくなったら……私の部屋に来てください」


「よし、これからホテルに直行だ」


 パンチッ☆


 アイリスに顔面を殴られて動きを止める。


「それより先に、その犯罪者たちを牢屋へ入れるのが先です。それと……先ほどから気になっていたんですが、その子は一体……」


「その子? ああ……彼女のことか」


 アイリスの視線が、俺が持ち帰った少女に向けられる。


 彼女は俺の後ろにサッと隠れた。そして呟く。


「標的の……アイリス王女」


「元、標的ね。殺しちゃダメだぞ~? からかうまでなら可!」


「物騒な話をしてませんか? もしかして……」


「そそ。彼女は暗殺者ギルドの元メンバーでした~! 今日から俺の娘ね」


「は?」


 アイリスがフリーズした。


 かまわず話を続ける。


「パパ?」


「そうそう。俺のことはそう呼んでくれ。ダディでも可!」


「……パパ」


「ちなみにママはアイリスだ」


「——えあっ!?」


 アイリスが奇声を発する。


 今日のアイリスはいつもの二倍くらい面白いな。


 からかえば、からかうほど彼女は輝く。


「よろしく、ママ。養ってください」


「みょ、妙に態度がデカいですね……その子」


「パパの影響」


「俺のおかげだな」


「悪影響じゃないですか……」


「酷くね?」


 普通に心にナイフが刺さった。


 でも、実際に自分の娘が俺と同じような人間になったらぶっ飛ばす自信がある。


 つうか俺が親だったら俺は確実にグレるね。……ん?


 ちょっと意味がわからなくなる。


「もっと正確に教えてください」


「簡単に話すと、そこの犯罪者に拾われ、虐待され、暗殺者に育て上げられた彼女を俺がまた拾ったってこと。娘っていうか妹って感じだね」


「お兄ちゃん」


「ワンモア」


「お兄ちゃん」


「最高だ。この子は俺が育てる。でも金はくれ」


「…………」


 ジト目でアイリスに睨まれた。冗談もそろそろ限界らしい。


「ごめんって。でも言ってることはあってるよ。可哀想でしょ? だから俺が育てる。ひとりくらい、アイリスを殺そうとした暗殺者が増えてもね」


「——よくありませんよね!?」


 アイリスの見事なツッコミが炸裂。


 その通りなんだけど、見捨てるのは可哀想だ。アイリスなら死なないし。


「……でも、まあ……同情はします。ユーグラム様が平気と言うなら、私は許可しましょう」


 さすがアイリス。気前がいい。


「ユウね。よかったじゃん……えっと、名前なんだっけ?」


「名無し」


「名無し? それはダメだ。可愛くない。……よし」


 名前を決めた。


でいこう。今日からお前はナナだ」


 ナナシのナナ。数字の7。ラッキーセブン。


「了解。アイリス様を守る」


「おー! 道中しっかり説明した甲斐があったな」


「すでに教育済みでしたか……なんとなく、不安が……」


 そう言いながらも、アイリスは王宮に暗殺者の少女ナナを入れてくれた。


 俺のことを信頼してくれてるっぽくて嬉しいな。


 まあ、そもそもナナじゃアイリスには勝てない。そういう安心感もあるんだろう。




「じゃあナナ。まずは国王陛下の寝室へ案内してやろう」


「ん、わかった」


 ガンッ☆


 おもいきりアイリスに後頭部を殴られた。




———————————

あとがき。


近付いて、離れて、また近付いた二人

新たに娘ができました〜(元暗殺者)

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