第7話 無愛想な清掃員

 近くのスーパーには非常に無愛想ぶあいそな清掃員がいる。というより、ほぼ全員無愛想である。


 この辺りでは大きなスーパーなのだから、清掃員の感情くらい豊かな人間を揃えろ。


 考えてみれば清掃員がやたら表情豊かでテキパキしていたら、老人が勘違いして話しかけに行き、作業が遅れるのも必至である。


 それを加味して、わざと無愛想な清掃員を雇っているとしか思えないのだ。


 もう少し愛想があってもいいが、確かにこれはこれで楽である。もし愛想のある清掃員が老人の対応で敵性を読めない老人共に敵性を向けると僕は不本意ながら戦うしか無い。


 嫌だな、老人の為に戦うのは、本当に嫌だ。仮に戦いに負けると厄介だ。僕はこの街を去らないといけない。


 正式には去るように誘導される。家の更新こうしん料が足りない、地域から騒音のクレームが来ている。それで引っ越さないといけなくなる。


 なので、今回のように無愛想だとそんな状況にならずに済む。いや、無愛想で敵性があるとそれはそれで厄介だ。


 さっきから清掃員がチラチラ見ている。このはさっさと立ち去った方が良さそうだ。スーパーの社員もいるようだ。組織的そしきてきな敵性、ここで戦うのは部が悪い。


「あの」


 スーパーの社員らしき男が声を掛けてきた。裏に連れて行かれるのか、この街にも慣れてきたのにもう潮時しおどきか。意外に短かった。この街に来て敵性感知能力に目覚めたからな。


「肩に鳥のフンがついています。トイレで拭っては」


 ホントだ。早く拭きたい。これは敵性以前の問題だ。きっと目が何故なぜ声を掛けてこないと言ったのだろう。


「清掃員が日本語話せなくて」


 トイレで拭った後に、日本語が話せない清掃員に小さな声でありがとうと伝えると、肩をバンバン叩いて去って行った。


 敵性は全く無かった。こんな人もいるのか。スーパーはただ無愛想な人間を入れていただけでは無いのだな。


 それから一月程でその外国人清掃員はいなくなっていた。

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