第6話 靴下売り場

 近くのスーパーには何でも置いている。利用するのは食品が多いが、その話は後にして、今日は同士がいる靴下売り場の話をしようと思う。


 靴下売り場は三階。上に百均ひゃっきんがあるが、僕が使うのは三階の方だ。だが、上の奴はこちらが意識的に敵性を出してもどこ吹く風であるのが気に食わない。


 何度も、早くしろと敵性を出しているのにゆっくり作業する男の店員には呆れた。大学生かな。ま、仕方ない。

 まだ人生経験が豊富ではないのだ。僕は紳士的なので列でわめいたり、文句もんくは言ったりしない。ただ二度と来てやるもんかと目を向けて敵性を出す。


 二度と行かないとは言っても結局はコーヒーフィルターを安く買う事が出来るのは百均なのでもうこれは期待せずに二ヶ月に一度は通っている。


 それで靴下売り場の話だ。そもそも靴下を買う男性は平日の昼間に立ち寄ることは多くないことを僕は知っている。大体、つがいの女に任せるきらいがあるそうだ。


 三つで何円の靴下を持ち、レジに行くと高齢の女がウダウダ金を出している。


「ポイントカード。どこに、そうだ。お金、五百円、ちょっと待ってね」


 僕は高齢の女に敵性を向けた。こういう圧倒的弱者に敵性を向けるのは無駄である上、余計にイライラしてしまう。


 歳を取るのは仕方が無い。だから、お金が出ないのもポイントカードが無いのも仕方ない。後でいくらそう思っても、かないクーラーの下で長く待ちたく無い。


 そしてそれは訪れた。別のカウンターから女の声がした。


「お待ちの方、お待たせしてすみません」


 きっと敵性を察知したのだ。僕が小さく話しても聞き取った。この女は出来る。初めて会った敵性感知能力者だ。


 でもこちらが敵性感知が出来ると分かったら、この街を去るしか無いだろう。もうどちらかが去る。さらば、名札通りだと小山。


 きっと会うことはもう無い。


「ありがとうございました」

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