第5話 図書館

 敵性感知をよく知るところが図書館だ。

 まず広い。子ども同士の喧嘩けんかもある。この喧嘩の時点で敵性感知が頭の中でひびく。


 読むのはもっぱら文庫本ぶんこぼんなのだが、ライトノベルも読みたい。この図書館にはライトノベルのコーナーがある。


 だが、このライトノベルコーナーも厄介やっかいだ。机に荷物を置いた従姉妹と同じくらいの女の子たちがコソコソ話している。敵性感知、どうせクラスの女子の悪口を言っているに違いない。


「昨日さ、飯田くんが声かけてくれたじゃん」


 そんな平和的な話で敵性を隠すことかな?


 そうか、僕には聞かれたくないのか。僕が敵性を感知出来ると同時に、君達にも僕が敵性感知出来ると認識している。


 そういうことでいいんだな?

 あまり目を合わさないで居よう。敵性に怪しまれると防御策ぼうぎょさくを取らねばならない。ここで人を傷付けてしまうと不味い。


 それが敵性を持った少女でもだ。


 ライトノベルコーナーを去ると老人の敵性感知過多になる。


 特に新聞コーナーがひどい。早く順番が回ってくるのを待っている老人、分かっているけどちゃんと読む老人。大きな声で話す女の老人、うるさくて不愉快な家族連れ。


 青年が図書館の係員のところに行った。大方、迷惑だから注意してくれとでも言いに行ったのだろう。


 係員の敵性感知をした。

 ここは修羅場しゅらばになる。僕は一目散に貸し出しコーナーに向かった。


「図書カードはお持ちでしょうか」


 迎えうる敵性に集中して、うっかりカードを忘れてしまった。

 僕は周りに注意して、あえて小さな声で忘れた事を伝えた。何度も聞き返す職員にあきれた。


 僕はさっき会った中学生に僕の敵性を察知されない様に声を小さく話をしているのにその配慮を出来ないのはこの力を持たないからだろう。


 幾度いくどか発声をして、やっと伝わった。身分証で借りる事が出来るので、次は持ってくる様に面倒そうに言ってきた。


 つい敵性が漏れそうになった。感知されては厄介だ。そう思って急いで図書館を飛び出した。

 


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