第三章 交錯する蒼白眼

第39話

 長きに渡ったドラゴンキャニオンの旅。

 人知れぬセイライさんの野望に付き合わされた形になったが、この旅で得た貴重な戦利品が幾つかある。その一つが魔水晶。

 旅から帰った俺は兼ねてから構想を練っていたマイホームのリフォームに取り掛かった。魔力を宿した魔水晶からは魔道具が作れる。


 ──まずは風呂作りからだった。

 クリスタルドリームで稼いだ資金で職人に浴槽を作ってもらい、水の魔力を宿したサファイアを埋め込み蛇口とシャワーを設置した。そして炎の魔力を宿すルビーでボイラーを作った。これでいつでも簡単にお湯を沸かすことができる。

 それでもってさらに、雷属性のアメジストで照明を作り、風属性のエメラルドで扇風機やドライヤーなんかも作った。

 魔水晶のおかげで、中世ヨーロッパほどの生活レベルが一気に向上したのだった。これにはカリバーを含め、セイライさんやラブリュスさんもご満悦だった。


 ちなみにピンクダイヤの指輪をはめたラブリュスさんは、今までとは違い、我が物顔で家の中をウロウロしている。セイライさんは何食わぬ顔をしているが、所有者の俺に魅惑の魔力は適応されない。美青年とどブスのイチャつきぶりを、俺は黙秘権を行使するように見守っていた。

 気は持ちようと言うが、後ろめたさが払拭された晴々しい姿の二人を見るのは不思議と悪い気がしなかった。



 ──魔水晶の使い道はリフォームだけにとどまらない。俺はコモドとの闘いでプラチナソードをへし折られたために剣を新調しなければならなかった。

 そこで金属の中で最も稀少価値の高いオリハルコンを購入。炎、水、雷、風、地、_5_大元素の魔水晶をあしらい特注のオリハルコンソードを生成した。オリハルコンはかなり高額だったが大金を手にした俺にとって入手困難な代物ではない。

 鋭い切れ味と硬度を誇るオリハルコンに_5_属性の魔力を宿し、オリジナルの最強のつるぎが完成した。名のある武器とまでは言わないが唯一無二のオリハルコンソードだ。

 これで時空魔法の弱点でもある攻撃力を補うことができる。


 そして何より、ここからは大きな声では言えないのだが、ドラゴンキャニオンから密かに持ち帰った物もある。


 じゃじゃあーーんっ! スライムの粉末!

 と、派手に紹介をしてみたが、あくまでも心の叫び。なぜならば、このアイテムはお湯に溶かすと、あら不思議。ヌルヌルのヌルリンコとなるのである。つまり、ローションになるのだ。用途は一つしかない。

 俺の本来の目的はハーレム生活を送ること。あれよあれよという間にジェットコースター式で物々しい冒険に巻き込まれてしまったが、根はただのスケベ野郎。スケベを謳歌するためだけにこの世界に転生したのが、俺の正体だ。スケベ大魔王の降臨である。


 さらにそんな俺がもう一つ特注で作ったアイテムがある。

 じゃじゃあーーんっ! ダイヤモンド製ディルド!

 抜群の硬度を誇るダイヤモンドで出来た淫具だ。男性器をかたどったカチンコチンの張型である。

 エクスが復活すれば、カリバーとエクス。二人を相手することになる。当然、俺一人では体力がもたない。かと言ってどちらか片方をないがしろにする訳にもいかない。

 パートナーを平等に愛し、満足させるのがあるじとしての務めだ。ディルドはいわばハーレム生活の必需品。エクス用とカリバー用の二本。それと両繋ぎになった物を一本。合計三本の特注品を用意した。

 両繋ぎのディルドをどう使うかって? ……それは後のお楽しみ。



 俺はムフフフフとスケベな妄想を募らせ、エクス復活のとき。カリバーとの約束の期間がくるのを待ち侘びていた。

 余談だが、生命力の魔力を宿したパールと呼ばれる秘宝も存在するらしい。それを男性器に埋め込むことで、常にエレクト状態を保てるとのこと。

 興味をそそられる話ではあるが、またの楽しみとしてとっておくとする。

 無限に広がるスケベな野望に心を躍らせ、俺はその時を待った。夢のハーレム生活。



 ──そしてついに、

 その時がやって来たのであった。

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