第31話
目を覚ました俺はギルドのベッドに横たわっていた。
「ご主人様っ! お目覚めになられたのですねっ!」
カリバーが潤んだ瞳で俺を覗き込んだ。
獣人族のギルドスタッフがカリバーの肩越しから声をかけてくる。
「この度のご活躍、感服致しましたニャ! コモド様も大変喜んでおられますニャ!」
聞けば、戦果はクリスタルドラゴン14体、ルビードラゴン1体。通常一割の報酬金は特別手当てとして二割の支給になるとのこと。
うん? 待てよ? 5億ドルエンかける14体。それにルビードラゴン討伐報酬30億ドルエン。合計100億ドルエンの二割。20億ドルエン。十人で割って一人2億ドルエン。
にっ、に、におくっ⁉
たった一日で普通の人間が一生かけても稼げない金額を稼いだのだった。まさにクリスタルドリーム。
「ドラゴンスレイヤーは魔力があるうちが華ですニャ! 稼げる時に稼げるだけ稼いじゃって下さいニャ!」
スタッフが喜色満面に言った。
「セ、セイライさんは?」
辺りを見渡し、セイライさんがいないことに気づく。
「皆さん打ち上げに出掛けましたが、あの方は一人で宿屋へ帰ってしまいましたニャ」
そうか。セイライさんらしい。と、納得して頬が緩んだ。
──とはいえ2億か……。俺は途方もない金額に現実味を抱けず、そのままベッドに仰向けになった。ぼんやりと天井を眺める傍らでスタッフが続ける。
エリア17に出現するルビードラゴンにコモドは手を焼いていたらしい。精鋭のドラゴンスレイヤーたちを持ってしても討伐は困難でギルドの厄介事だったそうだ。それを俺たちが成し遂げたためにお祭り騒ぎだと言う。
浮かれるスタッフの話を聞き流しながら、俺はいつのまにかウトウトと眠ってしまっていた。
翌日、目が覚めるとコモドに呼び出された。
「お前たちやるにゃ! お前たちの配属先はエリア17とするにゃ! 今後も魔力がある限り思う存分に狩るがいいにゃ!」
言わずもがな上機嫌なのが見て取れる。
「よろしくお願いしますね」
マダム・アスカが上品な口調で付け加えた。コモドとは対照的な悠然とした振る舞いは保護者のようにも見える。参観日に一際目を引く綺麗なお母さんという表現が最もしっくりくる。
わがままボディを強調するタイトなドレスは、目の保養ではあるが子供たちにとっては刺激が強すぎる。はだけた胸元にはゴージャスなネックレスがあしらわれ、指には世にも珍しい巨大なピンクダイヤの指輪が輝いていた。美貌と権力を兼ね備えた社長婦人にたてつく教員は一人もいないだろう。
「それじゃあ、これが今回の報酬6億ドルエンにゃ! 遠慮なく受け取るがいいにゃ! コモド様に感謝するにゃ!」
妖艶な魅力を放つマダムアスカの存在は、若輩者のコモドが権威を振るうのには後ろ盾として十分だった。
目の前に札束の山が築かれる。俺とカリバー、それとセイライさん。姿を見せないラブリュスさんは武器として扱われたらしい。
一対二で、二がセイライさんの取り分。それでも俺とカリバーは2億ドルエンの大金を一瞬にして手に入れたのだった。
これだけのお金があれば物価の高いこの街でも不自由なく暮らせる。当分の間はお金に困ることはない。あとはダイヤモンドドラゴンを探すだけだ。
「お前たち太っ腹のコモド様に感謝を忘れるでないにゃ!」
権力を鼻にかける嫌味な御曹司のような物言いで、コモドが下卑た笑みをみせた。
「くれぐれも魔力の消費量には気をつけてくださいね! それではあなた達に神のご加護があらんことを……」
マダム・アスカが何かのまじないのように手をかざすと、ピンクダイヤの指輪が妖しげな光を放ち、俺たちを包み込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます