195. 私はガチ勢になる! 1
「へぇ~、そんな話になってたんだ。じゃあ、私も決戦に向けて準備を頑張らなくちゃいけないわね」
ファイさんから決戦計画の説明を受けた翌日、私は説明会に参加していなかったルビィさんに決戦計画の概要を説明していた。
「はい、私も技巧師のパッシブバフを手に入れる為にスキル上げを頑張らないといけません!」
「おお、気合い十分ね! まぁ、レキが生き返る最大のチャンスってなれば気合いも入るか」
そう、この決戦はレキを取り戻す最大のチャンスなのだ。
これまでは、ゲームの安定運用やバグモンスター問題の対処の為に、神AIリソースの大部分を割いてしまっていた。けれど、メンテナンス期間にはバグモンスターの居場所を調べる事だけにリソースを割けるため、調査効率が大幅に伸びる。つまりそれは、完全なバグモンスターとなったレキを見つけれる可能性が高くなるという事だ。
……実際にレキを見つけた後のことを考えると少し憂鬱になるけど、レキの為にも出来れば私の手で決着を付けたい。
「それで、具体的なスキル上げプランも考えてるの?」
「はい、実はデバイスが壊れてログイン出来なかった間に、色々調べてスキル上げプランを考えてたんです。今日はこれから、そのプランに沿ってスキル上げする予定ですね」
「必要な情報を調べて、最大効率を求めて計画し、実践する。ナツはもう立派なガチ勢ね。……あの初々しかったナツが、遂に底の無い沼にハマってしまったかぁ~。感慨深いわね」
ほろりと泣き真似をしながら、そんな事をしみじみと語るルビィさん。
正直な話、最大効率を求めて調べたり計画を立てる時間はとても楽しかったので、冗談抜きに私はガチ勢の沼へと足を踏み込んだのかもしれない。
……
…………
………………
「シールドバッシュ!」
私は今、『業血の合戦場』という刀や棍棒を持った人型モンスターが多数出るエリアに来ている。
ここで戦っている理由の1つはパリィの練習をしながらスキル上げをする為だ。体術や隠密の技能を使いつつ、目を血走らせながら襲って来るモンスター相手に積極的にパリィを狙いに行く。
ネットで調べた際、『業血の合戦場は、パリィの練習にもスキル上げにも丁度良くお勧め』という情報を得たので実際にやって来たのだが、確かにタイミングを見極めてパリィをする練習にはもってこいの場所だった。
けれど、ここにはスキル上げやパリィの練習の為だけに来たのではない。
「よし、湧いた!」
100体目のモンスターを倒した時、その場に居た他のモンスター達は私から距離を取って跪いた。勿論これは、私に対して跪いている訳じゃない。これから現れるボスに対しての礼なのだ。
目の前の空間に、限りなく黒に近い濃い紫の煙が発生しだす。そして、カチャリ、カチャリと足音を立てて煙の中から1体のボスモンスターが姿を現す。
「剛剣 悪鬼。ノーラ神殿のコピーじゃなくて、本物のボスモンスター。……皆、頑張ろうね!」
「パルゥ!」
「くまぁ!」
「……キュッ」
そう、これがもう1つの理由。ペットのレベル上げ。
先日のクリスタルモール戦を経験したクロは、ますます強くなる事に前向きになり、レベル上げを積極的に行うようになった。けれど、やはり動かない木を叩くだけではテンションが上がらず、時間が経つと少しずつダレて来るのだ。
なので、ここのモンスターと戦う事でモチベーションを上げつつレベル上げを行い、帰ってからそのモチベーションを使ってイビルカースツリーでもレベル上げを行う。
ちなみに、ここの通常モンスターだとクロのレベル上げは出来るがパルのレベル上げは出来ない。そして、悪鬼相手だと2人共レベル上げが可能だ。
「アテンション クライ!『来い!』」
今の私の役割はタンク。ペット達に攻撃が向かないように敵のヘイトは全面的に私が引き受け、私が悪鬼の攻撃を凌いでいる間に3体のペットによる攻撃でHPを削っていく。
今回の1番の目的はスキル上げとペットのレベル上げなので、私が攻撃する必要が無いのだ。
私のヘイト技を受けた悪鬼が、摺り足で一気に距離を詰めて切りかかって来た。私はそれを冷静に見極め、盾で迎え撃つ。パキィンという小気味良い音を立てて悪鬼の刀は弾かれ、更に悪鬼はノックバックを受けて体勢を少し崩しつつ一歩後ろへと下がった。
これがパリィの効果だ。パリィはダメージを0にしてその攻撃を弾き、弾かれた方はノックバックを受けて体勢を崩す。このノックバック効果は盾スキルの値に依存しており、今の私だとノックバック効果はそこまで強くない。
剛剣 悪鬼は残りHP量によって自己強化バフを掛けたり攻撃技が増えたりするが、攻撃は全て物理攻撃のため対処がしやすい。
今の盾スキルのレベルだと全てをパリィする事は出来ないけど、パリィ出来ない攻撃は避け、出来る物は積極的にパリィする事によって、技量的にもスキル的にも経験値がどんどん溜まっていく。
そして勿論、私が悪鬼の対処をしている間に攻撃を行うペット達の経験値もウハウハだ。
――私はどんどん強くなる。だから待っててね、レキ!
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