151. 新しい力
「ナツちゃん、二つ名認定おめでとう♪」
「アンタッチャブルって二つ名に喜んでいいのか微妙なんですけどね」
二つ名認定を受けた翌日、エイリアスのメンバー全員で会議室へと集まり、今後の対策会議を開いていた。
そして、まず第一声としてミシャさんから受けたお祝いの言葉に、私は苦笑いしか返すことが出来なかった。
けれど、それは無理もないことだと思う。アンタッチャブル……つまりは『触れてはならない』という意味なのだ。いったい私はどういうイメージを持たれているのだろうか。
「二つ名の内容に関しては思う所はあるやもしれんが、二つ名を得たこと自体は悪くないとおもうのじゃ……少なくとも、力が必要な現段階ではの」
そう、今の私にはやるべき事がある。その為には更なる力が必要で、そういう意味ではここで二つ名を得れたのは僥倖だった。
まず二つ名には、その二つ名特有のバフ効果が付いている。今回私が得た二つ名に付加されていたバフ効果は『装備バフ効果1%アップ』。大きな効果では無いが、毘沙門天によって大きく増したバフ効果との相乗効果を考えると私との相性は悪くない。
そして二つ名を得た事により、更に私は十二天シリーズ『梵天の水瓶(ぼんてんのすいびょう)』という新たな力を手に入れた。
今まで私は知らなかったのだが、十二天シリーズとは課金アイテムではなく、ゲーム内でそれを手に入れる為の手段がいくつかあり、二つ名の獲得はそんな十二天シリーズを手に入れる為の1つの手段だったのだ。
「お前さんが手に入れた十二天シリーズはどんな効果があるんだ?」
「梵天の水瓶というアイテムで、正直かなりデメリットが大きくて使いどころが難しい物でした」
新たに手に入れた十二天シリーズ『梵天の水瓶』。梵天とは世界の創造神であり、プログレス・オンラインにおけるその効果は破壊と創造だった。
・任意のアイテムを破壊することで、任意の形の装備を創造
・破壊出来るアイテム数に上限無し。創造出来る装備は1つまでで、アイテムを破壊する度に自由に形を変化させられる
・創造した装備には、破壊したアイテムのレアリティに応じた分の基礎スキル上昇効果を付与
・創造した装備には、破壊したアイテムに付いているバフ効果を付与
※相性により付与されない効果もある
・破壊したアイテムのレアリティに応じて、梵天の効果時間を1~3分延長
・梵天の効果切れと同時に、梵天の効果で創造された装備は破壊される
まずアイテムの破壊が前提である時点で使いづらい。
強い力を得るにはレアリティの高いアイテムや、有用なバフ効果の付いているアイテムを破壊しなければならない。レアリティの低いアイテムを破壊したとしても、得られる基礎スキルの上昇効果は微々たるものなので、それでは梵天を使う意味があまりないのだ。
「そんな感じで、普段使いは出来そうにない物でした。……だけど、私の持つ最大の切り札にはなります」
「どういう事だ?」
「これからコツコツと梵天のコストにする為のアイテムを集めていきます。そして、重要な局面でそれらを破壊することで、毘沙門天以上の効果を発揮出来るはずです」
――重要な局面。……梵天は、あいつを今度こそ倒すための力になる。
「ナツちゃん、改修された懐中時計の使い勝手はどうだった? 変な改造とかされてなかった?」
「はい、使い勝手が一気に上がりました! ミシャさんが心配されてたような変な改造は無かったですよ?」
「そう、良かった。あの子は腕はいいんだけどねぇ~……偶にどうしようもなくアホな事しちゃうのよ」
実は今回、ミシャさんの提案で『時戻しの懐中時計』を改造する事になった。
ルビィさんによる私の新装備の話を聞いたミシャさんが「ナツちゃん、その懐中時計私に預けてみない? そういうコンセプトで使うのなら、もうちょっと使い勝手を良く出来ると思うの」と提案し、知り合いの生産職にミシャさん経由で依頼して機能を追加してもらったのだ。
ただ、その生産職は時々やらかす人らしく、もし依頼内容を無視して変な物に仕上がっていたら、ミシャさんが責任を持ってそのプレイヤーに弁償させるという事になっていた。
そうして完成した懐中時計には、音声認識機能が追加された。
今までは懐中時計のスイッチを押して起動する必要があったが、今では『神化』というキーワードを叫ぶと起動するようになったのだ。
たったそれだけではあるが、高速戦闘が余儀なくされるような戦いの中では、手動操作は出来るだけ省略出来た方がいい。たった1つの手間が命取りになってしまう事は十分に考えられるのだ。
ある話題を避けて、それ以外の事から先に話していたが、ある程度話し終わったところで遂に本命の話題へと入った。
「それで、ナツ君。……レキ君が残したペットロストアイテム、『心合わせの指輪』を使った結果を聞かせてもらえるだろうか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます