5章:迷子のテイマー
150. アンタッチャブル
「なんだ? おい、今何か唸り声みたいなのが聞こえなかったか?」
「いや、俺は聞こえなかったけど……空耳じゃないか?」
俺たちは今、常夜砂漠というエリアで採取クエストを受けていた。
クエスト内容は常夜砂漠に居るエリアボスからドロップするアイテムを冒険者組合に納品する事だ。
ターゲットのエリアボスは図体がデカくてやたら硬い、そして毒攻撃までしてくるサソリ型のモンスターだが、ある程度スキルが育っている俺たち4人パーティーなら何とか倒せる。そして納品用アイテム以外にも偶にレアドロップも落としてくれる、なかなか実入りのいいモンスターだった。
そんなエリアボスの居る場所に向かう途中、叫び声のような、唸り声のようなものが聞こえた気がした。
仲間が言うように空耳かとも思ったが、エリアボスの居る場所に近づくにつれ、その声がはっきり聞こえるようになってきた。
「……なんだありゃ?」
俺たちが見た光景、それは、薄暗い夜の砂漠で巨大なサソリと戦う1人の子供の姿だった。
その子供は手足に鎖付きの枷を着け、目は赤く輝き、背中から白い翼を生やして空を飛びまわっていた。
「おい、あいつ、エイリアスのナツじゃないか?」
「エイリアスのナツって言うと、アンタッチャブルか。……よく見たらあのエリアボス、バグモンスターじゃねぇか」
アンタッチャブルの姿を見るのは初めてだが、確かに噂に聞く姿と同じだ。だが、翼を生やして空を飛ぶって話は聞いたことが無かった。
「神化! 毘沙門天!!」
アンタッチャブルが何かを叫ぶとその姿が変わっていった。それまでの特徴的だった手足の枷は消え、全身の装備が大きく変わる。
そしてその体からは金色のオーラが立ち昇り、背には黄金の輪っかが出現する。ただのグラフィックでしかないはずのそれが、俺には神々しく感じられた。
「あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝!!」
だが、その戦い方は異常なまでに荒々しかった。
空を飛び回り、様々な技能で苛烈に攻撃を加えていくその様は、見ているだけで何か言いようもない圧力を受ける。
――これは恐怖じゃない……畏怖だ。
その後、アンタッチャブルは1人でバグモンスター化したエリアボスを倒しきり、帰還結晶を使って帰っていった。
「あれが、アンタッチャブルか……」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<<条件を満たしたことにより、プレイヤー ナツに二つ名『アンタッチャブル』を認定しました>>
<<二つ名を得たことにより、十二天シリーズ『梵天の水瓶(ぼんてんのすいびょう)』を獲得しました>>
「……えっ!?」
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