119. 戦闘準備
「今やってるバグモンスターイベントは目くらましで、今このゲームには本物のバグモンスターが居ると……。そしてそのバグモンスターを倒す為にエイリアスを設立。更に言えば、現状バグモンスターとメインで戦っているのがナツ……。にわかには信じられない話よねぇ」
ファイさんが出した条件を全て飲み、契約を交わしたことで今このゲームで起きていることのあらましを聞く事になったルビィさん。あまりに突拍子もない話に困惑しているようだった。
――まぁ、そうだよね。正直私も本物のバグモンスターをこの目で見たり、本当にデータを壊している様子を見ていなければ信じていなかったと思うし。
「ナツが嘘を吐いている様子もないし、運営がこんな手を込んだ事をしてナツを騙す理由も無い。……うん、ひとまず信じる事にするわ。で、私がやる事はナツに最高の装備を作る事と、バグモンスターの素材でエイリアスのメンバーに武器を作ることで良かったかしら?」
「そうだ。ナツ君は今、スキル育成専用ダンジョンでスキル上げをしてもらっている。ペース的にも恐らくあと3週間程でカンストするはずだ。ルビィ君には育ち切ったステータスを基準とした装備を作ってもらいたい。そして他のメンバーの攻撃手段確保の為にバグモンスター素材を使った武器作りも協力してもらえると助かる」
「武器関連は専門外なんだけどねぇ……。まぁ、やれるだけやるわ」
2人の間でこれからの話がどんどん決まって行ってる。けれど、私にはその内容で1つ気になることがあった。
「あのぅ、ファイさん。ルビィさんに作ってもらう装備一式の費用って運営持ちで大丈夫なんですか?」
「毎回必ず運営持ちになるという訳では無いが、今回に関しては運営が全額支援する形になるな。バグモンスター対策で必要な消費アイテムの大体は運営持ち、装備は時と場合によると思ってほしい」
「そうなんですね。……ちなみに今回の装備代が運営持ちになる理由って何なんでしょう?」
私は少し嫌な予感がして、恐る恐る今回の装備代が運営持ちになる理由を聞いてみた。
「ナツ君が先日行った、メナスタイガーとの戦闘ログを見させてもらった。その情報を元に運営チームで協議した結果、1週間後から運営が捕えているバグモンスターの討伐を開始する事になったのだ。今回の装備はそれに向けた準備ということにしている」
「バグモンスターの討伐って言うとハイエンスドラゴン以外って事ですよね? 強さ的にはそんなに強くないモンスターなんですか?」
「低級モンスターや中級モンスターも居るが、何体かレジェンダリー・アントヴァンガード並みのモンスターも存在する。だが、これまでの成長速度やメナスタイガーとの戦闘ログを見る限り問題はないだろう」
問題無いということは決してない。結果的に比較的余裕のある勝利のような形になったが、私的にはかなりギリギリの勝利だったのだ。あれ並みのバグモンスターが何体も出て来るなんて悪夢以外何物でもない。
ちなみに装備代が運営持ちになるかどうかの判断材料だが、バグモンスターとの戦闘を前提とした装備調達なのかが問題になるらしい。そして今回は事前に計画されているバグモンスターとの戦闘に必要な物資として運営からの支援対象内に組み込むそうだ。
普段だと消費アイテム以外の支援は許可が下りるまで少し時間が掛かるのだが、今回は1週間後からバグモンスターと戦う事を決めた協議内で押し通したらしい。
「今のタイミングであれば他にも要望を押し通しやすいのだが、ナツ君から何か要望などは無いだろうか?」
「要望……あっ、そうです! 実は私、新規に叫びスキルを育てる事に決めたんですけど、叫びスキルを育てる為のダンジョンって用意出来ますか?」
「ふむ、叫びスキルか……。分かった、急ぎ用意しよう」
トントン拍子で叫びスキル育成ダンジョンの確約が取れてしまった。次の装備代も出してもらえることが決まったし、色々優遇され過ぎてバチでもあたりそうで少し怖い。
「ねぇ、ナツの装備用に課金装備を運営で用意してもらうことも出来るの?」
「運営の方で所持している装備類は少ないので提供するのはゲーム内マネーになるだろう。それでルビィ君の方で他プレイヤーから買い取ってもらう形になるが、希少で人気と高い装備は金銭を出せば買い取れるという物でもない。その上でどういった装備構成にするかはルビィ君に一任することになる」
「了解。手に入る現実的な範囲で、ナツに合わせた最高の装備をってことね。……あまりに夢のような環境で、他の生産職に恨まれちゃいそうね」
恐らく今、ルビィさんの頭の中ではどういった装備にするのか考えを巡らせているのだろう。腕を組んで眼を瞑り唸っているが、その口はどうしようもなく緩んでいた。
私も1週間後の戦いに向けて色々準備しなくてはいけない。
ダンジョンでのスキル上げ、レキ達のレベル上げ、偉大なる師匠達との訓練……そして、オリジナルのバフ料理の完成だ。
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