99. 大きな大きなギルドハウス

「ここがエイリアスのギルドハウスだ。ギルドマスターのナツ君なら設備情報をシステムウィンドウから閲覧出来るので、あとで見ておくといい」

「……あの、ファイさん」

「何かな?」

「……私の予想より遥かに大きんですけど」


 私達エイリアスのギルドハウスがついに完成した。今日はエイリアスのメンバー勢揃いでそのお披露目式なのだが、そのギルドの大きさが私の想像を遥かに超えていたのだ。

 何で総勢6人で使うギルドハウスに、こんなお城のようなギルドハウスが必要なのだろうか。と言うか、城って時点でもはやハウスではない。


「あぁ、これには幾つかの要因がありこの形となったのだ。1つは、このギルドハウスはギルドハウスであるのと同時にバグモンスターの特別研究施設となっていること」


 私達はこれからゲーム内に現れたバグモンスターを退治していくことになる。当然その素材も集まることになるので、いっそギルドハウスにバグモンスター素材の保管庫や、その素材を利用した武器作りや研究等を行う設備も整えようということになったらしい。

 このギルドハウスには沢山の部屋があるのだが、そういう理由で既に多くの部屋がバグモンスター用に使われている。


「2つ目は、単純のこのエリアのリソースが余っていたという事と、先日ロコ君から送られてきた要望を満たし、且つ不足のないように組み込める設備は最大限組み込んでおいた」


 通常、プライベートエリアやギルドエリアは共有サーバー内に領域を確保されるのだが、なんとこのギルドエリアは完全に独立した専用サーバーを使っているらしい。

 その為、組み込める機能容量にはかなりの余裕があり、後日増設作業の必要が無いように最大限機能を盛り込んだ結果、ギルドハウスがここまで肥大化したそうだ。


「最後の理由だが、ナツ君はここをプライベートエリアにするのだろう? 自慢ではないが私に童女の好む家など分からんからな。部下に聞いてみた所『女の子ならお城とか憧れあるんじゃないですか?』と言われたので、標準的な城をモチーフとした外観にしたのだ」


 私も一応女子なのだが、お城に憧れなんて持っていない。と言うか、お城に憧れがあると言っている女子に会った事がないのだが……。


「まぁ、いいじゃねぇか。デカくて困ることはねぇんだ。それより、この前のバグモンスターから得た素材で武器は出来そうなのか?」

「ふむ、そうだな。その件も含め、いくつか報告しなければならないことがある。このあとギルドハウス内の会議室でまとめて報告しよう」


 ――城の中にある会議室かぁ……私の座る所が王様の椅子みたいな感じじゃないといいんだけど。


 ……


 …………


 ………………


 城の会議室はいったい何人で会議することを想定して作ったんだとツッコミを入れたくなるほど広かったが、それ以外は至って普通の会議室だった。

 城の中には調度品の類は殆どなく、正にからっぽのお城といった感じで、建物が大きいだけに少し寂しい内装となっている。ちなみに、この会議室も大きなテーブルと椅子が並べてあるだけで他には何もない。


「では報告会を始めよう。まずは先ほどギンジ君から質問があった武器に関してだが、バグ化したレジェンダリー・アントヴァンガードの顎からギンジ君用に刀を作ることが出来た。バグモンスターへダメージを与えられることも確認済みだ。こちらは今渡しておこう」

「おう、助かるぜ。これで次の戦闘では俺も真面な戦いが出来る。……だが、レジェンダリー・アントヴァンガードの顎か。一応上級素材ではあるんだが、俺が使うにしては少し貧弱だな」

「こればかりは仕方がない。戦力が揃えば運営が捕獲している上位バグモンスターを解放するので、それで武器のグレードアップは出来るだろう」


 ギンジさんに渡された刀は、刀身が黒く禍々しい見た目の物だったが、ギンジさんから言わせるとそれは貧弱な武器だったらしい。


「次にミシャ君とシュン君の武器に関してだが、2人はどういった武器が必要なのか要望はあるだろうか? ギンジ君という戦力が増えたことによって、今捕えている中位以下のバグモンスターを倒すことは問題ないだろう。要望があればそれらから得た素材で武器を作るが」

「う~ん、正直私は火力に関して貢献出来ないと思うんだよねぇ。だから、私は後回しでいいよ」

「僕は蹴りがメインですので、戦闘用の靴があると嬉しいですね」

「分かった。いくつか候補武器をピックアップして後日提案させてもらおう」


 ミシャさんは数多くのスキルを習得しているが、それらはあくまでパフォーマンス用に習得しているだけの為、どれもスキル値は高くない。これからの戦いも、前回のようなバッファーや罠師のような立ち回りがメインとなるのだろう。


「ロコ君のペットロストアイテムだが、こちらはまだ未完成だ。通常アイテムにバグモンスター素材を使って、バグモンスターに有効なアイテムを作るということ自体まだ実例がないため完成にはもう少し掛かりそうだ。バグモンスター素材のサンプルが増えれば完成も早まるだろうが、今はまだその為の戦力強化が必要な段階だな」

 

 ロコさんは、先日のリンスさんとの和解を経てバグモンスターとの戦いにペットロストアイテムを使用することを決めた。けれど、その完成にはまだ時間が掛かるようだ。

 ギンジさんという戦力が増えた今、私がもっと強くなれば戦力は更に強化され、運営が凍結処理しているバグモンスターの討伐にも着手出来る。そうすればシュン君の武器作りやロコさん専用のアイテム作りも大きく進むだろう。


「最後の報告になるが、ナツ君専用のダンジョンが完成した」


 ……遂に私専用の育成ダンジョンが完成したようだ。これで私はもっと強くなれる。

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