49. 新しいバフ料理素材とパワーレベリング
「ナツが……グレよった!?」
ロコさんのプライベートエリアで新装備の初お披露目をすると、第一声でそんな言葉が飛んできてしまった。
「別にグレてないですよ!!」
「じゃが、その服装はあまりに今までのイメージとかけ離れておって…………いや、そういうのに憧れる年頃は誰にでも訪れるか。……ナツよ、カッコいいからと言ってタバコにだけは手を出してはいかんぞ。癖になったら影響が大きいでな」
「吸いませんよ! と言うか、この服は私がお世話になっている生産職プレイヤーの方に一任して作って頂いた物なんです」
まさか、ここまで劇的な反応を示されるとは思わなかった。
ロコさんは普段から立ち居振る舞いがカッチリしている人なので、もしかしたらこういったパンク(?)とは全くの無縁だったのかもしれない。……まぁ、それは私もなのだけれど。
「デザインから全て任せてしもうたのか。じゃが、ナツは良いのかの? どうもナツの性格には合っていないように思えるのじゃが。いや、似合ってはおるのじゃがの」
「正直かなり抵抗はありましたけど、色々あってタダで頂けたのと、性能が今までの物と比較にならないので……まぁ、いいかなって思えてきて」
「お主はどんどんギンジの阿呆に毒されてきておるな。あの阿呆も性能のみを追及し、見た目にはほとんど拘らん男じゃからの。……と言うかその装備一式をタダで貰ったのかえ? 全体的に安物には見えぬし、特にその瞳、以前にガチャ景品一覧で同様の物を見た気がするのじゃが」
「ええ、それが……」
それから私は、この装備一式を貰えた経緯を話した。
それにしても、ギンジさんに毒されているなんて失礼な。流石に出されたのが半裸装備だったら私も着ない。……まぁ、コートの下はサラシなのだが。
「そういう事じゃったか。服飾ギルドはリアルでデザイナーをしている者や、服飾関係の大学生や専門学生が多いと聞くでな。そこの審査会となると力も入るという訳か」
「みたいですね。服飾ギルドに自分の服を飾れるのは一種のステータスらしいです」
ギルド内に飾られていた装備はどれもハイセンスで、デザインの良し悪しは正直分からないのだけれど、どれも高そうだった。
「紆余曲折あったが戦闘力は大幅に増したようじゃな。……ふむ、今日は少し予定を変更し、わっちがよく行く狩場へと向かうかの」
「ロコさんがよく行く狩場って、凄い高レベルなんじゃ……。えっと、何しに行くんですか?」
「高位のバフ料理素材集めとパワーレベリングじゃ」
……
…………
………………
ロコさんに連れられて訪れた場所は『猛威の樹海』という場所だった。樹海というだけあって周りには多くの木が生えており、それ以外にも沢山の植物や木の実が生えている。そして、そこかしこで獣の鳴き声が聞こえてきており、非常に怖い。
「あの、ここ凄く怖そうなんですけど、私や私のペットでも太刀打ち出来るんでしょうか?」
「うむ、間違いなく瞬殺されるな。恐らく今のナツ達ではダメージを与えることも出来んじゃろう」
「そ、そんな場所で何するんですか!?」
「じゃから言ったじゃろう? 高位のバフ料理素材集めとパワーレベリングじゃ」
この樹海には数多くの料理素材があるそうで、テイマーにとっては特に重要な『各種耐性系』『HP上限上昇』『防御力上昇』の素材が取れるらしい。
ただし、私の料理スキルではまだそれらの素材を扱えないので、高位のバフ料理を作る為にはまずは料理スキルのレベル上げの必要がある。ここに関してもロコさんに何か考えがあるらしく、後で課題を渡すと言われている。
ちなみにパワーレベリングとは『第三者の協力を得て行う、本来不可能な速度での経験値稼ぎ』という物で、今日ここで行うパワーレベリングとは……。
「さぁ、ナツよ。わっちらが此奴の動きを封じておる間に、後ろから攻撃するのじゃ」
「……なにこれ?」
象並みに大きなトラが牙をむき出しにして唸っている……横に倒れた状態で。
「ヘイトを稼ぐ挑発技能、麻痺、幻惑、耐性低下、それらの合わせ技じゃな。ここのモンスターはなかなかレベルが高いでな、生半可な技量では耐性を貫けんが、わっちとわっちのペットであれば朝飯前じゃ」
「あの、これって攻撃しても大丈夫なんでしょうか? こちらに襲い掛かって来たりしませんか?」
「大丈夫じゃ。しっかりと行動阻害が出来ておるし、もし解けたとしてもヘイトをわっちらが稼いでおるからナツ達が襲われることは無いのじゃ」
そう言われても、やはり最初は怖いのでレキやパルは具現化せずに、まずは私だけで攻撃を行った。
恐る恐る後ろから近づき、巨大なトラの尻尾の付け根当たりを短剣で切り付ける。それでもトラは全くこちらに意識を向けることはせず、ひたすらロコさんを睨みつけて唸っている。
「大丈夫そうですね。レキとパルも一緒に攻撃してみます。……ちなみにこのトラって何て名前なんでしょうか?」
「メナスタイガーじゃな。この樹海に生息するモンスターにはメナスの名を冠する者が多いのじゃ」
それからはレキとパルを呼び出し、私と一緒にメナスタイガーをチクチクと攻撃しだした。ただ、やはり私たちの攻撃力ではダメージを与えることは出来ないようで、メナスタイガーからは一切ダメージエフェクトが発生していない。
ダメージを与えることが出来ていないのに経験値が入ってくるのか心配になったが、答えとしては「全く問題ない」とのことだった。
「重要なのは行動であって効果量ではないからの。じゃが、この様なやり方でレベル上げ出来るのは50前後までなのじゃ。そこからは簡単に取り押さえられるモンスターでなくなるし、攻撃だけでなく回避や攻撃を受けるようにせんと取得経験値の効率が悪くなるでな」
ペットの経験値とは攻撃、回避、防御などの行動によって得られる物で、相手とのレベル差やステータス差によって取得経験値量が増減する。低レベルの時は攻撃行動だけでもレベル差さえあれば十分にレベルアップするが、レベルが上がってくると攻撃以外の行動も行って戦っていかないと取得経験値の効率が悪いらしい。
ここでの行動はとても単調な物で、『食材採取』『モンスターと遭遇したら20分掛けてゆっくり倒す』『戦いの時以外はペットをサモンリングに戻す』の繰り返しだ。そして、帰る時間になる頃にはレキのレベルは+4、パルのレベルは+9となっていた。
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