50. ロコ式ブートキャンプ(上級編)
『猛威の樹海』でのパワーレベリングを行った翌日、今日もロコさんのプライベートエリアで連携訓練を受けていた。
「ナツよ、またペットへの指示だしが適当になって来ておるぞ。どんなに疲れておっても、どんな状況でも、テイマーはペットを意識し続けねばならん」
「はい!」
ロコさんの連携訓練はどんどんレベルを上げて行き、目の回るような量と速度の狐火を私とペット達でさばいていく。
「うむ、今日はこの辺で終えておくかの」
「今日は終わるのが早いですね。何かご用事とかでしょうか?」
「この世界以上の用事など、わっちに有りはせんよ。この後は料理のパワーレベリングを行うのじゃ」
「料理の……パワーレベリング?」
それから私はロコさんに連れられて、ロコさんの家のキッチンへと案内された。ロコさんのキッチンはとても広くて、見た事もない調理器具が満載だ。恐らく私の料理スキルでは扱えない器具ばかりだろう。
「今日の為にナツでも扱える食材を買い集めておる。今からやってもらうのは、ペット達の食事の用意じゃ」
「……ペット達と言うとロコさんのペットもです?」
「そうじゃ」
「……全員分です?」
「そうじゃ」
「……ロコさんのペットには大型の龍とかも居ますが、それも含めて?」
「そうじゃ」
「……」
……
…………
………………
「ひぃ、ひぃ!」
「ナツよ、そんな手際では全員分作る頃には日が暮れてしまうぞ」
「はい、頑張ります!!」
鬼だ。ロコさんは鬼だ。ロコさんは狐じゃなくて鬼だったんだ!
ペット全員分の食事の用意は熾烈を極めていた。何と言っても量が凶悪で、しかもレキやパルと違ってロコさんの飼っているペットは全て成体なのでよく食べる。
しかも、料理は料理技能でのショートカット調理は使わず、全部1から手料理しないといけない。ロコさん曰く、ショートカットで作る際に得られる経験値は、手料理と比べてかなり少ないので効率が悪いらしい。……ちなみに、普段ロコさんはペットショップに売ってあるペットフードで済ませているらしい。
「料理は慣れじゃ。バンバン作れば慣れて来るし、効率の良い作り方も自然と出来るようになってくる」
「この訓練はどれくらいのペースでやるんですか!?」
「ふむ、料理に関しては訓練に来れる日は毎日じゃな。ペットのパワーレベリングと立ち回りの訓練は交互にやる事とする」
なんでも、『猛威の樹海』で取れる食材で作るバフ料理は中央市場で売ればよく売れる為、『猛威の樹海』の食材を扱えるレベルまで料理スキルを一気に上げる必要があるそうだ。
そしてバフ料理を作って売れるようになれば、『猛威の樹海』がペットのレベル上げと金策の両方を兼ね備えるようになるらしい。
「と言うことで、ばんばん作るのじゃ」
「ひぃ!!」
……
…………
………………
「燃え尽きました……真っ白に」
「うむ、お疲れ様なのじゃ」
全員分の料理を作り終える頃には精も根もつき果てており、料理を終えると同時に私はテーブルに突っ伏していた。
「今でこそペットショップで購入するペットフードを使っておるが、昔はわっちも全部自分で用意しておったのじゃ。そのお陰で料理スキルはぐんぐん上がっていったからの。ナツもこの訓練ですぐスキルが上がるはずじゃ」
その言葉は正しく、元々16だった料理スキルが今では24になっている。たった1日で8もスキルが上がった証拠だ。ちなみに、スキル値の上昇に合わせて扱う食材もレベルアップしていくらしい。
「あの、私に合わせて食材を買い集めたって言ってましたけど、お金とか大丈夫なんでしょうか? 訓練を付けてもらう経費として払わなくて大丈夫ですか?」
「問題無い。このレベルの食材など、わっちからすれば小銭じゃからの」
1つ1つが小銭だったとしても、これだけの量を消費するのだ。合計で考えるとなかなかの出費になるに違いない。
けれど、ロコさんは性格的にそれを請求することも無ければ、一部でも払うと言っても受け取らないだろう。なので、少し心苦しいが甘えさせてもらう事にしよう。
――私が強くなってロコさんの隣りで戦えるようになったら、沢山恩返ししよう。
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