46. 多頭飼いの連携訓練
レキとパルによる定位置争いは一先ず落ち着いたことで、ロコさんからの連携指導が再開された。
「では早速、これからやる訓練内容について説明するのじゃ。これからやる訓練とは……的当てゲームじゃ!」
「的当てゲームですか?」
「うむ。今から白亜がオレンジ色の狐火と青色の狐火を出す。ナツは指示だしのみに専念して、レキかパルのどちらかに攻撃させるのじゃ。……ただし、青い狐火は必ずパルに攻撃させること」
ロコさんが訓練内容を説明すると、私たちの前にぽわっとオレンジ色と青色の狐火が現れた。
「この狐火は攻撃技では無いので触れても衝撃は無い。なのでレキは思いっきり噛みついたり引っかいたりして良いぞ。それと、パルの初期魔法は分かっておるかの?」
「はい、アイスブリッドっていう氷の礫を飛ばす魔法ですね。昨日の内にしっかり調べときました!」
「うむ、宜しい。パルはまだレベル1じゃから10発も打てばMPが切れるじゃろう。その際はヴィタリティリフュージョンでパルのMPを回復させるように」
ヴィタリティリフュージョンはテイマーがペットを抱きしめて静止している間、2人のスタミナ・HP・MPの自然回復量を上げる技能だ。その性質上、戦闘中に使うことが無かったので、使い慣れるにはいい機会かもしれない。
「訓練内容はどんどんステップアップしていくので、ナツはそれに全力で食らい付くのじゃ。まずい所があれば逐一指摘もするから、そのつもりでの」
まずはウォーミングアップとばかりに1つずつ狐火を出して、複数のペットに指示だしをする感覚に慣れる。次に、複数の狐火を同時に出して指示だしの効率を上げること強いられる。そしてその次のステップ……複数の狐火が出現し、襲って来る。
……
…………
………………
「遠距離攻撃はタメが必要じゃから隙も大きい。じゃからパルをしっかりと守れる位置取りを意識せんと、途端に戦況が崩れる」
「はぁ、はぁ、はぁ……はい、身に染みて理解しました」
今日のロコさんは今までになくスパルタだ。それは前にあったゾンビMPK事件があったからか、もしくは新たなペットが増えたことで、今までのやり方では危ないからなのかもしれない。実際に今日は自分の未熟さを思い知った。
訓練はどんどんステップアップしていき、最終的には私も指示だしをしながら攻撃に加わり、尚且つレキとパルに支援魔法を欠かさない立ち回りの訓練になっていた。だが、全く上手く行かない。目まぐるしく変わる状況、迫る狐火、重ね掛けが間に合わず切れる強化魔法。……情けない事この上ない。
「今日はこの辺で終えておくかの。明日からも最低限の動きが出来るようになるまで、今日と同じ訓練を繰り返す予定じゃ。今日出来なかった事はしっかり振り返って明日に備えるのじゃぞ?」
「はい、頑張ります」
ちなみにレキとパルは、疲れて横になっている私の上で同じく横になっている。少し重いけど、この子達の可愛さで疲労が倍速で癒されている気がする。
「そういえば、白亜の狐火ってMP消費量どれくらいなんですか? 大量に出したり飛ばしたりしてましたけど、全然MP切れ起こしてませんでしたし」
「ああ、白亜の狐火は魔法ではなく種族特有のエフェクトじゃからMP消費は無いんじゃよ。ほれ、レキの周りにもキラキラとした粒子が飛んでおるじゃろ? それと同じじゃ」
「へぇ、凄いですね。確かにダメージとかは無いですけど、MP消費無しであんなに火を出せるのって……戦闘でも何か利用出来そうです」
戦闘訓練で利用していた狐火は触れても熱くないしダメージも無い。けれど視覚的には攻撃魔法と何ら変わらない物なので、それをあんなに大量に、そして自在に操れるのは色々使い道がありそうだ。
「うむ、実際対人戦などではよく活用しておったよ。所詮こけおどしじゃが、常に先手先手で動かねばならぬ対人戦ではかなり有効な手であった。……ちなみに、レキのそのキラキラエフェクトも訓練次第で光を強くしたり粒子の量を増やしたり出来るはずじゃ」
「そうなんですか! 常に薄く光っている物だったので、制御出来るとは思ってませんでした。けど、狐火と比べると何に使えるのか思いつかないですね」
「まぁ、制御するにしても限度があるからの。白亜の種族特有エフェクトは使い勝手が良いタイプの物じゃったという事じゃな」
白亜の狐火程使い道は無いかもしれないけど、もしかしたら何かに使えるかもしれないので、エフェクト操作の訓練はしておこう。そんな事を考えていると、不意にフレンドメールの着信音が鳴った。送り主はルビィさんからだ。
「あ、もう服が出来たんだ!」
「どうしたのじゃ?」
「実は、今のステータスに合わせた服の製作を依頼している人からメールが来まして。服が完成したから取に来てってことみたいです」
「ほう、あり物ではなく特注したのかえ? なかなか奮発したではないか」
「……まぁ、色々事情がありまして」
今日はそろそろログアウトしないといけない時間になって来たので、明日取りに向かうことにした。
どんな衣装にするか、私は全くのノータッチでルビィさん任せにしているので、現物を見るのは楽しみだが少し不安でもある。出来ればあまり奇抜な格好でなければ良いのだけれど……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます