第33話 これから歩む道
「ロバート様!」
夕食の後、愛しい夫を呼び止める。いつもは手紙のやり取りをして終わり。でも、今日こそは……!
「どうした? マリア?」
「お願いがあるのです!」
「なんだろうか? 私にできる事ならなんでもするぞ」
「ロバート様にしかできませんわ。……その……今夜お待ちしております」
「……な、なななな……」
「もう、全て終わりましたよね? しばらくお仕事もお休みのはずです」
「……なぜ、それを……」
「ジョージに確認しましたわ! 約束ですよ! 部屋で待ってますからね!」
ううう…… 恥ずかしすぎる……!
けど、キッカケはわたくしが作るわ。
わたくしは、ロバート様の妻なのだから!
固まっているロバート様に口付けをすると、部屋に入って準備をする。
「エイダ、いつもありがとう」
「こちらこそ、奥様に仕えられて嬉しいです。さ、急いで準備をしましょうね」
お母様に頂いたナイトドレスを着て、香を焚く。この日の為に、1ヶ月も前から全身を磨いた。その間、一回も寝室に来てくださらなかったのは寂しいけど、準備ができたと思えば良いわ。
本当は分かってる。ロバート様の外交のお仕事が終わったのは昨日。あちこちにに出向き、多くの書類と向き合っていた。いくら屋敷にいても、わたくしに向き合う余裕なんてなかっただろう。
お仕事は落ち着いた。待っていればいずれロバート様は来て下さる。けど、もう待てないわ。またいつ式の日みたいな事が起きるか分からないんだもの。
久しぶりに開いた指南書には、奥の手として積極的にアプローチするのも効果的だと書かれていたわ。
何度も使える手じゃないけど、今回は有効なはず!
「とてもお美しいです。それでは……ごゆっくり」
エイダが部屋を出て行くと、ドアの向こうでロバート様の叫び声がした。
「もう、早すぎるわ」
そんなところも愛おしい。
「ロバート様、お待ちしておりましたわ」
ドア越しに声を掛けると、そっとドアが開いた。
「マリア……!」
鍵を閉めて、ロバート様に口付けをする。
「ロバート様、愛してます」
「私も……マリアを愛している……その……待たせてすまなかった……」
「良いのです。おかげで自分を磨く時間がたっぷりとれましたもの。結婚した時よりも、少しだけ成長したのですよ。じっくり見て下さいな」
「マリア……とっても綺麗だ……」
「ロバート様も素敵です。わたくしと結婚して下さって、本当にありがとうございます」
「私こそ……マリアのように綺麗で賢くて、優しい人を妻にできるなんて思わなかった……愛してるよ。マリア」
これから朝までの時間は、夫婦だけの秘密。初めての事ばかりだったけど、とても幸福な時間だったわ。
ロバート様と過ごす日々はまだ始まったばかり。困った時も、幸せな時も、ロバート様と共に生きていくわ。
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