98話 開会式②
キャパシティ55000人と言われている東京ドームだが、当然のように満員だった。
各々が推している探索者の応援グッズをもって、皆目を輝かせていた。もっとも、グッズの大半は自作だが。
その中には勿論、響やエレナを推す観客も多数いた。
選手の入場とともにファンファーレが鳴り響き、そして同時にそれをかき消す程の歓声が上がった。
二分割されたフィールドはいつも通りの人工芝だが、観客席との境目と、分割部分には限りなく透明に近い魔法障壁が展開されていて、流れ弾などの被弾を防ぐ役割をしている。
そして今回の為に取り付けたであろう、天井中心部には六面の超大型モニター。観客席からでもこのモニターがあればある程度細かい動きも見れるだろう。
案内役に従い、そのままついていく響だが圧倒的なまでの歓声に驚かされた。
今まで大勢に注目された事などまるでなかった響は、この大観衆の中心に自分がいる事がなんだが違和感があった。
ピタリと止まった案内役の前には、高台がありマイクが設置されている。
高台の前に全参加者が並ぶと、別のゲートからスーツを着た翼が歩いてきてマイクの前に立った。
参加者に向けた物とは別の歓声が湧き、会場はより一層熱気に包まれる。
翼はそれをうるさそうな顔で見回し、おほんと咳払い。
『まず、本戦参加者諸君、よくやった。ある意味ではお前らはもう一般的な探索者とは違う存在になったはずだ』
パチパチと、あの翼が拍手を送った。
その程度、と思うかもしれないが馬渕翼が人を褒めて拍手をする姿など恐らくはこの場の誰も見たことがないだろう。
意外すぎる行動に、思わず観衆も同じように拍手を送る。5万人を超える拍手は大気を揺らし、およそ手を叩いているだけとは思えないほどの迫力があった。
数秒待ってから翼が手を上げると、拍手は止まった。
『本戦のルールだが予選とは違ってランダムトーナメントだ。詳細は知ってると思うから省くが、ABブロック左右に別れ決闘をしてもらう。だがお前らレベルの探索者が戦えば周囲の被害も、そしてお前らの命も無事とは言えない。俺としては別に構わなかったんだが……どうもそういう訳にもいかなくてな』
それと同時に派手なドレスを着た女性が、金色の腕輪のような物を持って来て翼に渡した。
『この腕輪は装着者に特殊な魔法壁を展開し、ダメージを肩代わりする役割を持つ。許容限界に達すれば砕け散る。この時点で即決着だ。んで、観客席とブロックの間にも魔法障壁があるが……これを施したのはS級探索者篠崎カグヤ……分かりやすく言えば組合の会長様だ。壊れる心配はねぇから全力で戦え』
翼はそう言って、何かを確認するように順に参加者に視線を送った。
──組合の会長……? でも確か会長って2年前から入院してたんじゃなかったっけ? もう退院してるのか……全然話が出ないから知らなかった。
篠崎カグヤと言えば、探索者なら誰もが知っている超大物。組合の会長を務めるも、病に倒れ2年前に入院しそれっきり話が出てこない謎の多い人物でもある。
病院関係者はこぞって口を閉ざし、本当に入院しているのかさえ謎であり、死亡説まで出た程だ。
しかし、その会長本人が障壁を施したとなると話は一変する。
会場もどよめき、信じられないと言った様子だった。
『細かい指定は特にないが、ダラダラやられても面白くねぇ。だから制限時間を設けた。決勝、準決勝意外は一試合30分だ。それで決着がつかない場合、腕輪のダメージ総量を測り決着とする。試合に関しては以上だ。さて──気になるこれの事も教えてやろう』
そう言うと亜空間が出現し、そこに手を突っ込み、例の真紅の玉を取り出した。
副賞として優勝者に送られるSランクダンジョンのレアドロップアイテムだ。
『これは魔核つってな……大悪魔の魂を解放する鍵みたいなもんらしい。これだけ聞くと物騒なだけで役に立たないが、実はこいつは所有者の魔法の威力を250パーセント上げるぶっ飛んだアイテムでもある。俺はこんなもん要らねぇから、お前らにくれてやるって話だ。まともな探索者なら喉から手が出る程の代物だろ?』
絶叫。それは観衆も、参加者もだ。
バフ系アイテムは多数あるが、それもせいぜい60パーセントか限界。250パーセントとなると、ぶっ飛んだと言うよりも、最早与太話の類いだ。この男が言わなければ。
しかし、そんなアイテムすら必要としない翼の実力は一体どれ程のものなのだろうと、響は呆れながらも考えていた。
『つーことで、長々と喋っちまったがそろそろ開幕と行くか? 俺とやりたいやつ、金が欲しいやつ、この魔核目当てでもなんでもいい。勝った奴が正義だ。んじゃ、早速一試合目を決めるぜ』
翼がそう言うと、天井の大型モニターに各探索者の名前が高速で表示され、ピタリと止まった。
『Aブロック、A級探索者エレナ・スカーレット対B級探索者舞原圭介。Bブロック、A級探索者アルフレッド・リグオーン対A級探索者高橋愛。呼ばれた奴はフィールドに残ってそれ以外は控え室に行け。それじゃあ、始めるとするか』
翼がニヤリと笑い、観衆は再度大歓声を上げ、第1回戦が始まろうとしていた。
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