93話 予選終了
【擬似ダンジョンクリアおめでとうございます。60秒後に接続が切られます】
ピコン、と軽快な音と共に大きくメッセージが表示された。
狙い通りに事を運べたみたいだ。
まず
弱点特攻の発動した状態で、間髪入れず頭部に飛燕を叩き込む。
弱体化のタイミングが即時反映だったのが功を奏して、なんとかボスであるジャックを撃破する事ができた。
・おめでとうおおおおお!!
・最後クソかっこよかったぞ!!!!!!
・さすが我らが主人公やな。後は本戦に進めるかどうかやで
・あ、ポイントぽいぽいしないとwww完全に忘れてた
・俺もやwwあぶねえwww
・……おめ!
視聴者の盛り上がりも最高潮に達し、ポイントもどんどん増えていき視聴者ポイントは気付けば三万を突破していた。
もうあとは順位が三以内な事を祈るしかない。
ポイントランキングのメッセージも来ていたが、どうせすぐに分かるはずだと思い見るのを辞めた。
どさっと腰を下ろし安堵のため息をついた響は、ふと視界の端にあるランダムボックスが気になり始めた。
「あれって……今開けたらなんかあるのかな?」
・終わったんだからもうええやろwwwめっちゃ気になる
・気になるけどクソの役にも立たないのは確定してるわな
視聴者の言う通り、仮に今どんなアイテムが出たとしてもボスを倒してしまった以上何の役にも立たないだろう。
だがそれて気になるのが人の性だ。
疲労で重たくなった足取りで箱の前まで歩くと、箱の上には《ランダムボックスEX》との表示。
「EX? ええ、じゃあ無理してでも最初に開けておけば楽できたんじゃ……」
何が出るかまでは分からないがEXとなると、普通のものよりもいいアイテムが出る事に間違いはない。
複雑な気持ちでそっと箱を開けると、
「……えっと、空なんですが」
箱の中身は文字通り空っぽで、アイテムどころか何も入っていなかった。
・これは酷いwww
・クリアしたから空なんじゃなくて?
・お疲れ様でしたw
「うーん、別にいいけど……なんだかなあ」
首を傾げて空の箱を見ているとメッセージが表示され、そこにはこう書かれていた。
【EXアイテム不使用でのボス討伐おめでとうございます。特典としてボスの討伐ポイントが増加します】
そもそもの討伐ポイントが幾つなのかは分からないが、そんな特典があるなど知らなかった響は大いに喜んだ。
「え、まじか! ラッキー! これで本戦に進める確率も上がったぞ!」
・運営そこまで考えてたんか
・でもこれ開けなかったら貰えなかったのかなww
・どうなんだろ。さすがにそれはないんじゃない?
「皆さん、最後まで応援ありがとうございました! 本戦に行けたら引き続き応援よろしくお願いしま──」
と、言いかけた所で時間が来たのか一瞬で視界が暗転した。
プシューと音がして自動的にカプセルが開く。
その音で戻ってきた事を察した響は、ヘッドギアをとりぐぐぐっと伸びをした。
「くー! フルダイブも面白いけど、やっぱりこっちのがいいや」
たった数時間だと言うのに随分久しぶりに身体を動かした気分だ。
ぐるりと周りを見渡してみても、開いているカプセルは二つしかなかった。
──一つはエレナさんだとして、もう一つは……?
エレナの他に自分よりも早くクリアした人物がいる。
クリアタイムが全てではないが、どうにも不安になる光景だ。
「佐藤様、お疲れ様でした。待機室へとご案内致します」
そういって頭を下げたのは、スーツにサングラスとSPのような格好をした男だった。
中での60秒の間に彼らを派遣したのだろうか。
「あ、はい。お願いします」
強面の男に着いていき、案内された部屋には簡易的な机と椅子が並べられていて、部屋の角にはスピーカーが備えられている。
エレナは前の方に座っていて、もう一人は真っ黒なローブに身を包み端の方で腕組みをして立っていた。
エレナは響に気付くと立ち上がり駆け寄って来た。
「早かったな佐藤響。貴公なら来ると信じていたよ」
エレナは屈託のない笑みを浮かべ響の肩に手を置いた。
「はは、ありがとうございます。 エレナさんが一番最初だったんですか?」
内心、エレナ程の探索者にそう言って貰えるのは嬉しかった。
「ああ、自分でも驚いているところだよ。次にそこの彼で、貴公は三番目だな。順当に行けば我々が本戦にいくのではないだろうか」
「どうでしょう、そうだといいんですけど……」
それから他愛もない話をしているうちに、ゾロゾロとクリアした者が入ってくると皆しきりにため息をついた。
そして最後の一人が入ってくると、ピンポンパンポーンと館内放送の音が響いた。
「皆さん、お疲れ様でした。神奈川予選は只今の時間を持ちまして終了とさせて頂きます」
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