89話 閉ざされた扉を開けろ②

結論から言えば西の部屋ではかなり簡単に青い玉を手に入れることが出来た。


積み木で出来たアスレチックのようなもので、ランタンが邪魔してきたが特に問題なくゴールにたどり着いた。


その際、他のランタンよりも一回り大きいランタンが玉を守っていたが、難なく撃破。

体感的な強さで言えば、弱い部類のBランクのボス程度だろう。


残念なのは、ここは現実世界ではないのでいくらモンスターを倒した所でレベルアップしない事だ。


そして今まさに、響は南の扉を開ける所だった。


「今度は迷路かぁ。本当に子供の遊び場みたいなダンジョンだな」


中は積み木で出来た迷路だった。

ここまで西と東で部屋のサイズは同じだったので、今回も同じだと仮定するとそこまで広くはないものの、ある程度時間はかかってしまうだろう。


少し歩くと早速左右の分かれ道が見えてきた。

よく観察してみても、当たり前のように目印になりそうなものはない。


・右の道が正解だ。誓ってもいい。俺は生まれてこの方迷路で迷った事がない。信じてくれ主人公!!


コメ欄にはなんの根拠もない自信に溢れた視聴者が、右へ進む事を促していた。


「うーん、悩んでも仕方ないですし右行きますか。一応、目印っと」


右側の壁に短剣で軽くに傷をつけ、簡易的に目印を作成。

これで仮に同じ所に戻ってくるタイプの迷路でも、ある程度場所の把握が出来るはずだ。


・主人公有能で草

・これは賢い!

・次の目印は形変えるともっと分かりやすくなるよ


「あ、そうですね。毎回形変えるようにします」


なるほど、と頷き響は右の通路へと急いだ。

そこからは一本道で右へ左へと曲がりながら、歩いていくと行き止まりになっていて、そこには見慣れたかぼちゃ頭がこちらを見ていた。


・ハズレじゃねぇかwwwwww

・絶対こうなると思ったww

・コメ欄は宛にしちゃ行けないことが証明されたな。

・今お前だろさっき言ってたの! 他人事みたいに言うなよww


「右でも左でもいつかはこうなりますから、気にしてないですよ」


言いながらさっと短剣を構え即座に臨戦態勢に入る。

ランタンはそれと同時に奇声を上げながら飛びかかってくるが、


「キィ!キィィィ──」

「迅雷」


短剣で手斧を弾き、かぼちゃ頭を鷲掴んでそのまま迅雷を放つ。

零距離でくらったランタンは、断末魔すらあげられずに絶命した。


「そろそろもう少し手応えのあるモンスター出てこないかな。面白くないや」


死骸には目もくれずそう言うと、踵を返して先程の左側の通路へと歩を進めた。


それからの響はかなり運がないというか、残念だった。

ゴールにたどり着くまでの間の分かれ道の、その全てをことごとく外していた。

ある時は自分で選び、またある時は視聴者の意見に従ったが、全て行き止まりにたどり着いてしまう不運な男は中々いないだろう。


しかし、それでも悪いのとばかりではない。

行き止まりの中では、ランダムボックスが二つ程配置されていたからだ。


一つ目の箱は、HPポーション。

もう一つはこれまた短剣。

だが最初の短剣と比べると性能は良いらしく、武器のグレードアップと考えればそう悪い話ではない。


ここまでかなり難易度は低いが、ボスまだ弱いとは限らないのだから。

強化出来る所は強化しておいて損はない。


そしてゴール地点には、無駄に豪奢な装飾の施された台座にのった緑の玉。


すぐにそれをとると、北の扉へと向かった。




「これでよし!」


扉の窪みに三つの玉を嵌め込むと、ガチャと金属音が鳴った。

どうやらロックが解除されたみたいだ。


・遂に最終フロアまできたな!

・後はボスだけだ! やっちまえ主人公!

・その後、彼の姿を見たものはどこにもいなかった……

・俺この戦いが終わったら結婚するんだ!!


「サクッと終わらせますよ。本戦に進まないと怒られちゃうんで」


コメ欄が盛り上がる中、響は余裕たっぷりに北の扉を開けた。

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