82話 身の丈にあった武器①
前書き
新作、この身勝手な異世界に復讐を
投稿しましたので、よかったらみてやってください!
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「くそ! さっきの所以外どこ斬ってもダメージにならない!」
首、脚、胴とあれから切りつけているが、どれも死肉を撫でるだけで骨に傷を付ける事すら出来ずにいた。
肉を斬ってダメージになればいいが、どうやら腐毒龍ディリティリオは特殊な生命体なのか、死肉を斬られてもダメージそのものがないように見える。
それに逆骨を切りつけたせいで激昂状態となり、所構わず毒を撒き散らしているので中々近付く機会もない。
ほんの僅かな隙を見つけては斬り掛かるがダメージにならないのではこちらが消耗するいっぽうだ。
攻めあぐねているそんな時だった。
「おい、F級君。俺からのプレゼントだ」
翼がそう言って響に向かって刀をぶん投げた。
「えぇ!? うわっ……て、刀ぁ!?」
投げられた刀の中心をキャッチすると、
──なんだ、これ。普通の刀じゃ……ない?
触れた瞬間から何か異様な圧を感じた。
刀そのものが膨大なエネルギーを発しているような、そんな感じだ。
恐る恐る柄を引き刀身を覗いてみると、美しい銀色の白光とは真逆に刀身まで真っ黒だった。
光をも吸い込むような完全な黒。
「な、なんですかこの刀!」
「身の丈にあった武器を使え。それも探索者に必要な事だ。ごちゃごちゃ言ってねぇでとりあえずその死に損ないにトドメをさしたらどうだ?」
言い方は最悪だが、言っている内容は間違っていない。
響はモンモンとしながらも、腐毒龍に向き直る。
──身の丈にあった武器って、白光じゃだめってことか。
そんなに言うならと、一度腐毒龍と大きく距離をとって目目連で黒刀の情報を引き出してみる事にした。
【鬼哭】
・攻撃力850
・特性 力と速度にそれぞれ50の補正がつく。また全ての斬撃に裂傷が付与され、傷の治癒速度を大幅に延滞させる。また、精神力が低い者が使用すると精神汚染を受け暴走する危険がある。※妖刀
「よ、妖刀!? 何でこんなもん……でも、性能は白光と比べると天と地の差だな……結構気に入ってたけど、今はそんな事言ってられないよな」
攻撃力も白光と比べると数倍高く、特殊効果にステータス補正ととんでもない性能だった。
精神汚染の不安はあるが、ひかくてき精神力の高い響はあまり心配はしていなかった。
白光を壁に立てかけ、鬼哭を腰に提げる。
見た目よりもずっと軽く重さなどまるで感じない。
距離をとった響に向け、腐毒龍はガチガチと牙を鳴らし大きく口を開けた。
──ブレスか!?
次の瞬間には凄まじい量の毒液が生成され、濁流となって押し寄せて来た。
「なんちゅう馬鹿げた攻撃だよ!」
咄嗟に跳躍し、回避するがこれは判断を誤ったと思った。
しかし、それしかなかったのも事実。
足場を全て呑み込む毒液は強い酸性なのか、シュゥゥと音を立て地面すら溶かしていく。
触れれば無事では済まないのは一目瞭然。
「迅雷!」
響は一か八か大出力の雷撃を足元に放った。
雷鳴を轟かせ地面に直撃した雷は、毒液を吹き飛ばし大きく地面をえぐった。
なんとか足場を作った響は、着地すると腐毒龍目掛けて跳躍し、
「いつまでもお前のターンじゃねぇんだよ! ──飛燕ッ」
間合いに入った瞬間、抜刀し居合の容量で斬撃を飛ばす。
対する腐毒龍は雄叫びを上げ毒の壁を作り出す。
が──
ザンッと子気味良い音を立て、斬撃は壁を突破し腐毒龍の開いた口に襲いかかる。
先程までは傷もつけられなかった響の攻撃だが、鬼哭の桁違いの攻撃力のおかげで同じ結末にはならなかった。
巨大な牙に触れた斬撃は、まるで豆腐でも切るかのように切断し、勢いを殺さず顎を斬り落とす。
「おらァッ!」
一瞬遅れて斬撃に追いついた響は、居合によって振り抜かれた軌道をなぞるように返しの一閃。
カッと骨に当たる音が鳴り刃はそのまま骨を断ち、
「まだだ! ──飛燕ッ!!!!」
その状態で更に飛燕を発動させ、新たな斬撃を生み出していく。
鬼哭を振り抜き頭部を叩き割り、斬撃はそのまま首を両断し、胴体の中間部までをも斬り裂いた。
──この刀やばすぎだろ!?
斬った本人ですら驚く程の斬れ味。
くらった腐毒龍はなすすべもなく、低い音を響かせ身体を地に預けた。
【レベルアップしました】
【レベルアップしました】
レベルアップ。
つまり、腐毒龍ディリティリオの討伐に成功したのだ。
レベルが150を超えてからは、途端に上がりにくくなった。
Bランクダンジョン一回で、せいぜい一か二。
Cランクだと最早数回回らないとレベルアップすらしなかった。
それをたった一体で二もあがるのは、さすがAランクと言った所か。
なんだか思ったよりも手応えがないと感じた響だが、よくよく考えればこの個体は翼により虐められた後だ。
本来ならこんなものでは断じてないだろうと、手放しでは喜べずにいた。
「まあでも、勝ちは勝ち……か」
鬼哭を一振し、刀身についた死肉を払い納刀。
ふと、翼達を見るとニヤついた顔つきでこちらに歩いてきていた。
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