68話 対決!氷鬼ギルド①


飛燕ひえんか、結構俺と相性いいんじゃねぇか?」


剣士系統の響にとってサンダーボルト以外に、中遠距離の攻撃手段が増えるのはありがたかった。


MPの消費も多くなく使い勝手もいい。

火力不足も志大才華フロラシオンの振り分けのおかげで解消しつつある。


ダンジョンに入る前と今では別人のような強さを身につけていた。


「響……強く、なりすぎ……じゃない……?」


若干呆れた顔でミアはそう言った。

例の連結ダンジョンの最中でも飛躍的成長を目の当たりにしていて、更にそこから数段上の実力を見せつけられては呆れるのも頷ける。


──ああ、そうか。なんにも知らないんだった。ミアには隠す必要もないし、落ち着いた時にでも打ち明けようか。


今現在響の成長の秘密を知っているのは熊谷とフィオナのみ。

まあ恐らく組合の上層部には話が広がっているはずだが、直接話したのはその2人だけだ。


その2人に話して、これからダンジョン攻略を共にするミアに話さない理由はどこにもなかった。


「今回の騒動が片付いたら全部話すよ。だから少し時間をくれないか?」


騒動と言うのは勿論氷鬼ギルドの事だ。

Bランクダンジョンはクリアしたが、本命はまだ何も手を付けてはいない。


「ん……わかった……」


ミアもそれで納得してくれたらしく、それ以上追求してはこなかった。


2人はそれから付近のモンスターの魔石を剥ぎ取りポーチに収納した。

Bランクダンジョンと言うだけあって中級と上級魔石ばかりで、換金すればかなりの金額になりそうだ。


剥ぎ取りを終え出現したゲートを潜ろうとしたその時、背後から強烈な殺気を感じた。


「ッ!!」


咄嗟にミアを巻き込み横っ飛び。

2人がいた場所には火炎放射が触れるもの全てを焼き尽くしていた。


この雪山ダンジョンに炎系統魔法を使うモンスターは存在しない。

それなら何故? 答えは簡単だ。


「──氷鬼ギルドッ!」

「隼人……やっぱり……」


後方には剛力隼人率いる氷鬼ギルドの面々。

数はそんなに多くなく5人程だが、ビリビリと肌を刺す圧力は剛力をはじめ他のギルド員も相当な実力者であることが伺える。


「よぉまたあったな餓鬼。まさかてめぇらがBランクダンジョンをクリアするとは予想外だったぜ?」


ニヤついた表情の剛力は、それでも尚余裕があるように見えた。

Bランクダンジョンをほぼソロでクリアした実力者だったとしても、自分の敵ではないとそう言いたいのだろうか。


「何言ってんだよ隼人。コイツは低ランクとはいえディザスターゲートを1人で封じた英雄様だ。当然だろ?」


小柄な杖を持ったギルド員がそう言った。

もうディザスターゲートの件はある程度公表されているのだろう。


「ん?あー……やっぱこいつだったか。かっこいいじゃねぇか。街を救って今度はお姫様も救うってか?

くはははは! 出来ると思ってんのかよ」


今まで感じた事のないような凄まじい殺気。

しかしそれでも2人は気圧されることなく、しっかりと相手を見据えていた。


「隼人……もう、やめて……ミア、ギルド……抜ける。あの事は……誰にも話さ、ない」

「駄目だ。俺の管理下にねぇ奴は信用出来ねぇな」


ミアは何か秘密を知っている。

それが、剛力単体の事なのか、それとも氷鬼ギルドの事なのかはわからない。

だがどっちだろうと、剛力がミアに固執する理由がそれなのだろう。


──なるほどな。大方こいつらの悪事だろうな。それよりも今は、コイツら全員相手にできるかどうかだ。 剛力単体でもかなりしんどそうだぞ。弱点を上手く突けば何とか行けるか……?


【A級覚醒者 剛力隼人 Lv63】

HP: 5990

MP: 850


力420

防御力280

知能325

速度330

精神力336


さすがA級覚醒者でありギルドマスターといった所か。

執行部部長であるエレナと同等のステータス値であり、当たり前だがそのどれもが響を凌駕している。


「ミア、こんな奴に何を言っても無駄だ。こんなクソ共は俺がぶっ飛ばしてやる。だから少し下がっててくれ」

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